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No.615(2021/1/22)
ベラルーシで独立系IT労組結成の動き

 2020年8月9日ベラルーシで行われた大統領選挙は、現職ルカシェンコ大統領の勝利と発表されたが、反対派はそれを認めず、ルカシェンコ大統領退陣を求める大衆運動が開始された。8月から9月は毎週日曜日首都ミンスクを始め全国で集会とデモが開催され、警察や治安組織は実力でこれを制圧した。この運動は労働現場ではストライキとなって現れ、政治スト拡大が一部見られた。例えば、2015年JILAFの招へいプログラムに参加したリザさんは今年夏に逮捕された。彼女はグロドノ市の大化学コンビナートAzotで、ストライキ委員会が結成された際、コンビナート全体がストに入れるように努力していた。ストの要求としては、ルカシェンコ退陣、やり直し選挙、不正選挙に関わったものの処罰、暴力をふるった治安当局者の逮捕などを要求として掲げていたが、おそらくストの影の立役者としてのリザさんの位置を当局が情報収集し、逮捕に至ったのであろう。冬に入って大衆運動は沈静化したかに見えるが、実際には自然発生的な運動から組織された運動への質の強化が図られているように見える。その例が、ベラルーシのIT企業で労働組合の結成が図られたというニュースである。

 ベラルーシはトラクターなど工業がそもそも発展しているが、最近ではIT産業で有名になっている。欧米の企業から受注するアウトソース・プロジェクトがベラルーシの産業を支えている。ベラルーシIT業界で最も有名な会社が「EPAMシステム」である。EPAMは1993年、ベラルーシからアメリカに移民したドフキン氏とベラルーシに住むロズナー氏が米国で創設した企業である。同社はその後社員数1万7000人の規模まで拡大し、2012年にはニューヨーク証券取引所で上場を果たした。現在の全世界の職員数は3万人、顧客にはバークレー銀行やエクスペディアなどグローバル企業が揃っており、日本には2018年に進出を果たし、大きく成長してきている。(JETRO「外資の対日投資成功事例―サクセスストーリーEPAM Systems Japan合同会社」参照)ミンスクのオフィスでは6000人が働いているとのことである。(2017年ミート・リクルート・レポート)一方で、「ぺレング」は1975年ヴァヴィロフ・ミンスク機械工場のデザイン部門が中央デザイン事務所「ぺレング」に統合された時に始まる。1994年に民営化、2004年にベラルーシ・ハイテク企業に登録されている。軍需から民生まで様々なITサービスを提供し、特に監視カメラに強いとされ、ミンスクでは2056人の技術者が働いている。(ぺレングのホームページ)

 ベラルーシでも労働組合は、旧ソ連の労組の流れを引き継ぐ体制側の労働組合評議会(FPB)と独立系の民主労働組合会議(BKDP)に二分されている。BKDPを構成する4労組の中で特に強力な組合がベラルーシ独立鉱山労組である。ルカシェンコ大統領退陣闘争の中で指導機関として現れた調整委員会と独立鉱山労組は、2020年11月オンライン組合結成キャンペーンを始めている。さてIT労組の組織化であるが、ベラルーシのオンライン新聞dev.by12月21日号によれば、昨年「EPAMシステムと株式会社ぺレングの労働者たちは独立鉱山労組傘下の組合を作ると決定した。結成に向けて9月11日全ての文書が当局(ミンスク市労働局)に提出され、その後当局からはいくつかの補足的文書が要求された。ところが当局は11月末に独立鉱山労組の組織範囲(正式名は、鉱山、化学、石油精製、エネルギー、運輸、建設その他のベラルーシ労働者独立組合)にEPAMとぺレングのIT企業の専門的な仕事は独立鉱山労組の範疇には入らない。即ち、規約の例外として、他の業種の企業で独立鉱山労組の下部組織を作ることはできないとして労組結成は認められないとの決定を送った。dev.byにこの件を説明した独立鉱山労組幹部によれば、同労組結成以来30年間このような形式的な理由での登録拒否は初めてとのことで、これまで法的な面で登録に問題があったとすれば、提出文書の不正確性に関するもの、例えば登録にあたって署名した活動家がすでに企業を退職していた、などしかないとのことである。今回の登録拒否は、国際的な労働基準に適合していないばかりでなく、ベラルーシの法「労働組合について」などに対しても違反している。独立鉱山労組は、当局の措置を巡って、労働組合権を侵害するものとして裁判に訴えることになる。」

 EPAMとぺレングという2つのIT企業で独立労組ができることは、ベラルーシの労働環境を大きく変えることになろう。労働者の要求が取り上げられ、交渉によって、諸問題を解決できる当たり前の労使関係作り、この動きがサービス産業に広がる第一歩としてこの労組づくりがある。ベラルーシの政治経済情勢の発展の中で、労組結成がどう進むのか注視すべきであろう。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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