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No.611(2020/10/21)
ウーバー・タクシー運転手を巡る労働形態の法整備

 現在、カリフォルニア州ではウーバーやリフト・タクシー運転手といったアプリ・ベースの労働者を独立契約者と認定し、一定の諸手当を付与しようとする会社起草の”提案22”法案の住民投票が実施されようとしている。
 これについて、9月23日のロサンゼルス・タイムスの社説は「この提案は運転手及びギグ経済への解決策にならない」としつつ、従来の従業員、独立契約者という形態だけでなく、第3の「独立労働者」の形態を法的に整備する必要があると主張している。

 「独立労働者」の考え方は経済学者であるアラン・クルーガー氏とハリス前労働長官がブルッキングス研究所の論文で提唱したもので、「独立労働者とは、多様な仲介業者を通じて仕事を選別し、個人的かつ職業的な欲求を融合させながら、一般の従業員よりも仕事の時間と場所に多くの裁量権を行使するが、一般の独立契約者よりは価格や諸条件への権限が低い者」として、彼らの柔軟性を保持しつつも、従業員と同等の労働保護を付与する法的整備を求めている。

 しかし現在の法律は従業員と独立契約者の区分だけであり、従業員には最低賃金、残業代、労働災害補償、失業保険などが定められている。最近の問題としては、会社の通常業務に携わる全てのフリーランサー、短期労働者、一般独立労働者を従業員として認定する要求があり、他方では、州労働法の例外にされたのが医者や弁護士、投資アドバイザー、フリーランス・ライター、写真家である。

 しかしこれらに当てはまらないのがアプリ・ベースの労働者で、これが”提案22”となったが、運転手だけが対象で、他の多くの弾力的な仕事を望む労働者は対象にない。

 各種調査では18歳以上の労働者の4分の1が主要な仕事以外、例えばベイビー・シッティング、家の清掃や庭の手入れなどから収入を得ているとされ、アプリ・ベースの仕事の比率は未だ非常に低いが、特に若年労働者のサイド・ビジネス紹介への魅力は大きい。

 アプリ・ベース企業の功績は労働者を確保することとサービスを求める顧客をマッチさせ、労働者各自が自分のスケジュールで動けるようにしたことである。州政府はこの革新を維持しながら、アプリに生計を依存する労働者を搾取から守る体制を造らねばならない。企業だけが有利にならないバランスが必要だが、提案22にはそれが無い。

 以上がロサンゼルス・タイムスの社説要旨だが、今回の”提案22”がタクシー運転手を従業員でなく独立契約者と認定し、一定の諸手当だけで、充分な労働保護がないままに承認されることが、他の多くの「独立労働者」への先例になる可能性があり、強い警戒感を表明した。現在、自分のスケジュールを主体に働く「独立労働者」が増大する中で、労働法整備が急務であることを指摘している。
 なお、住民投票だが、米国の多くの州が議会に代表者を送る選挙だけでなく、直接的な住民投票制度を持っており、住民が発案する具体的な法案の承認、公職者の罷免要求、そして議会が承認した法案の賛否を問う投票もある。

 日本では、全国ユニオンのアドバイスで、2019年秋にアプリベースのフード・デリバリーサービスに従事する労働者が組合を結成し、労働諸条件についての協議を始めたところである。同労組では、配達員の労働環境の改善を通して、全てのプラットフォームワーカーが安心して働ける法制度の整備を目指している。インターネット上のプラットフォームで仕事を得る働き方は今後増えていくと考えられるが、自由度の高さだけでなく、安全・安心との両立は重要な課題である。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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