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No.601(2020/6/17)
コロナ対策で出し過ぎた連邦失業手当 -主要2新聞の社説

 5月21日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は「失業を長続きさせる方法」と題する社説を掲げて、連邦失業手当の出し過ぎを警告した。要旨は次のとおりである。

 先週の新規失業申請が240万件を数え、総申請数は過去9週間で3860万件に達した。そうした中で各州が経済封鎖解除に動き出しているが、労働者の多くが仕事に復帰する意欲がない。その理由は失業者の3分の2が就業時よりも高い失業手当を受けているためだ。
 シカゴ大学が下記の調査結果を発表した。

 3月に出された2.2兆ドル規模のコロナウイルス経済対策により、連邦政府は各州の失業手当に上乗せして週$600を支給しているが、$600は時給$15に相当する。各州の失業手当は就業時収入の半額から3分の2、「金額にして週$200-550程度(3月26日CNNニュース)」だが、連邦手当ての上乗せで大幅増額となり、それも低所得者ほど増額率が高くなった。
 調査は「$600の失業手当は中間所得層の所得保障を目的に計算されているため、中間所得以下の労働者には所得増額になる」と述べている。そのため、レイオフ労働者の68%が増額となりその率は平均で134%、20%の労働者には倍増、パートが多数を占める底辺10%の労働者には3倍増となった。
 州や産業によっても違いがあり、小売業で失業した中間所得の労働者は42%の所得増、企業閉鎖の清掃労働者には58%の所得増加となった。また37州の中間所得労働者の失業手当は41%増、ニューメキシコ州では失業労働者の半数が77%以上の所得増となっている。

 かくして調査は「コロナ減少と雇用再開が期待される中で、高額の失業手当を受けている労働者の職場復帰問題が重要となった」と指摘し、ある経営者は「多くの労働者が何もしないで週$1,200の所得を得ている」と言う。各企業が労働者の再雇用に苦闘する中で、増額された失業手当と競合出来ないでいる。

 $600の失業手当は6月31日で期限切れとなる。民主党は1月までの延長を要求しているが、トランプ大統領は要求を拒否すべきである。企業が労働者を確保できなければ経済復興も遅れる。労働者確保にボーナスを出すスーパー・マーケットも出ており、アマゾンも残業代を倍額にしたが、多くの企業には失業手当と競合できる賃上げは出来ない。(要旨は以上)

 これに対して5月26日のワシントン・ポストは、「予期せざる失業手当の払い過ぎに修正が急務」とする社説を掲げた。その要旨は次の通りである。

 2か月前、コロナ対策として実施された週$600の連邦失業手当は大多数労働者の就業時収入100%を保障しようとするものであったが、予期せぬ結果として、多くの労働者が復職したら減収になるような過大な金額を支給する現状を生んだ。これは食品雑貨のようなエッセンシャル部門で仕事を続ける労働者に比較して、レイオフされた百貨店店員が増収になるなどの不均衡も生んだ。(シカゴ大学によると、2/3が以前より増収、外食産業のように打撃の大きな部門を含む1/5は収入倍増)

 しかし、この事態はある意味で避けられぬものであった。通常、失業手当は各州が支給するが、各州での収入水準がつかめない中で、この連邦失業手当て週$600の支給を決めた。この結果、2~3か月間で過大な失業手当が支払われているが、これは必ずしも悪いことではない。特に、最大の増収が最低収入層という点では進歩的でもある。

 今必要な政策は、長期になると予測される低賃金労働者の失業を食い止めつつ、就業機会を確実にとらえて、徐々にでも復職を図ることである。ある共和党上院議員は就職する労働者に一定期間週$450の手当を継続支給することを提案している。他方、シカゴ大学は就業時収入への定率手当てを提案している。この方法でも就業時収入のほぼ100%が保障出来て、細かな計算も必要無いとされる。

 国民全員がコロナ失業者の収入保障と早期復職を願っている。党派を超えて、均衡ある政策実現に取り組むことが議会の急務である。(要旨は以上)

 以上が両紙の社説だが、米国議会はCOVID-19対策の緊急性を重視して個別審査を避け、連邦手当ての定額支給に踏み切った。たしかに、失業手当によって就業時よりも収入増となった人々は、6月31日の期限切れまで再就職の気持が起きないかもしれない。

 コロナ災禍からの経済復興には、一般消費に大きな影響を持つ外食産業を始め、観光産業、運輸業などへの顧客の回復、それに原油価格など幅広く、息の長い取り組みが必要とされる。反対意見を言うだけではなく、まずは、この緊急時に生活に喘ぐ低所得世帯に迅速に手当が支給できたことを是として、第2波、第3波を想定しつつ国民の生活と安全を第一義に、新たな労働形態、生活様式、エンターテインメントの表現方法などの模索に向けて、各界の労使に知恵を絞った協力を促す論調を望みたい。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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