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No.598(2020/5/27)
シカゴ教職員組合(CTU)の盗賊行為

 5月11日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は「労働組合を脱退した組合員が未だに組合費を強制徴収されている」として、それを非難する社説を掲げた。要旨は以下のとおりである。

 2018年、米国最高裁は「労働者が賛成しない労働組合の意見表明に使われる組合費の強制徴収は言論の自由の権利に違反する。公務員の組合費徴収の際には当人の明確かつ積極的な同意がなければならない」と判決した。
 ところが先週、シカゴの教員2名が組合脱退後も徴収が止まらないとして訴訟を起こした。それによると、昨年秋、シカゴ教員組合(CTU)がストライキを起こした際、2名は教壇に立ち続けることを決意して組合を脱退、10月にシカゴ公立学校区に組合費の支払い停止を申請した。しかし、その後も2週間ごとに$35と$59の徴収が続いており、その理由は毎年8月に申請を受け付ける組合規約によるとされる。

 原告側教員を代弁する全国労働の権利法擁護財団(NRWLDF)のメッセンジャー弁護士は「今年5月1日現在、全米でこうした労働組合による法の抜け穴をつく行為が89件発生している」と述べている。これに対しCTUのブロック顧問弁護士は「これらの訴訟は労働者と労働組合の権利を侵害しようとする右派勢力の攻撃の一環だ。CTUは法律の文字通りに行動している」との見解を述べた。しかし、この見解は組合による抜け道とごまかしであり、連邦裁判所が最高裁判決を厳密に実施させなければ判決の意味はなくなる。

 以上が使用者側を代弁することの多いWSJの社説だが、米国の労働法解釈は時の政権によって、大きく変化する。2018年の最高裁判決は2016年のトランプ政権成立後、共和党指名判事が多数を占めた最高裁が下した解釈によるもので、それまでの「労働組合が締結した労働協約の恩恵を受けるものは非組合員であっても組合費が徴収出来る」との見解を大きく変えることになった。労働協約の恩恵を受けながら組合費を払わなくて済むということになると、組合が存続できない。こうした窮地に立つCTUが「組合規約に定めた8月申請」の規定を盾に窮余の策に訴えている姿がうかがわれる。

 こうした厳しい弾圧を生んでいるのは、共和党と使用者による労働組合への激しい敵意、そして共和党政権を成立させる一般国民の組合への理解である。社説に書かれているのは公務員労組に関するものだが、民間労組の組織率が過去25年間に16.8%から6.2%にまで激減した背景を謙虚に反省し、米国労働組合は伝統的な戦闘的運動から脱却しなければならない。労働運動の危機が叫ばれるなか、選挙での民主党勝利だけに望みをかけるのではなく、使用者との相互理解を増進し、一般国民に受け入れられる運動の在り方について議論を進めるべきではないだろうか。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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