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No.596(2020/5/18)
新型コロナショックが韓国自動車産業労使関係を変えるか

 迅速できめの細かい対応で新型コロナ感染を収束させつつある韓国は、感染症対策の世界の手本とも賞賛されている。一方、ワクチンや根本的治療薬のない中で、4月24日に韓国政府が発表した2022年までの生活ガイドラインは、再びこの感染症を拡大させないために、人々の生活様式はもとより産業・企業の在り方も従来型から大きく変化させることを求める内容であった。

 いち早く正常化しつつある韓国自動車産業にもその変化の兆しがみられることを5月5日付中央日報が以下の通り、伝えている。

(要旨)
 韓国の4月の自動車輸出は36%(出荷額ベース)減少した。世界金融危機以降、最大の減少幅となる。新型コロナウイルス感染症の拡大で主要輸出対象国の販路が断たれてしまったためだ。中国発の部品供給支障による生産危機を収拾したのもつかの間、今度は外需ショックを受けた形だ。

 ただ、内需が健闘している点は好材料だ。3月の自動車国内販売は前年比10.1%増となり、内需が冷え込んでいる他の国より遥かに良い。韓国政府の個別消費税引き下げ政策に各企業の相次ぐ新車発売効果も一役買った。グローバル経済が急激に停滞する中で、活発な内需は当面の韓国経済の希望である。

 しかし、問題は長時間の納車待ちが出ていることだ。せっかく復活した購買意欲に水を差しており、実際に、納車待ちがあまりにも長すぎて契約を取り消す事例も頻発しているという。韓国の自動車産業はこれまでも、強硬な労組の壁にぶつかった生産方式の硬直化が問題になってきた。

 幸いなことに、最近韓国自動車産業労使関係にも変化が見える。今年初めに発足した現代自動車新労組執行部が柔軟で合理的な立場を強調しつつあり、労使の雰囲気が変化しているという評価も出ている。最近では輸出減少で雇用状況が不安になったことを受け、品質向上努力に対応して雇用と賃金の保障を獲得する「労使win・win」モデルを強調するようになってきている。組合は多車種混流生産など、合理的配置転換システムに対して前向きに検討とするとの意欲も見せている。

 このような組合の対応努力は明らかに肯定的に見られているが、もう少し見守るべきではないかという声も少なくない。内部の強硬グループの反発も変動要素だ。実例として、一時的に週52時間を超えての特別勤労延長を要求する部品企業の要求が労組で拒否されることもあった。

 文在寅大統領は今年のメーデーで「労働者は韓国社会の主流」と語った。主流となれば、それに見合う責任感と柔軟さが伴わなければならない。現代自動車労組、労働界が韓国経済の将来に対しより強い責任感を持つことを望む。
(要旨は以上)

 また、国際政治学者のイアン・ブレマー氏は5月4日のNHKニュースウォッチ9でパンデミック後の世界を次のように予想している。
 「企業はグローバル化について考え方を変えるだろう。ナショナリズムや保護主義が強まる。パンデミック・リスクの露呈した世界では、企業が自国回帰させる動きを強める。その際ネックになるのが高い人件費である。企業はそれを回避するため技術革新を加速させる。オートメーション化、AI・ビックデータ、ロボット工学によって労働力は必要なくなる。第四次産業革命だ。それによって、最も打撃を受けるのが労働者と中間層である」

 パンデミック後の世の中が一変するというのはその通りかもしれない。韓国自動車労使はすでにその世界に入りつつあり、労使で働く者の雇用と生活を守り、産業・企業を持続させて行く道を模索することになるだろう。

 日本の産業労使もこのことを念頭に、現在そして将来について、少しでも早く共に協議・検討していくことが重要だろう。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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