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No.594(2020/5/15)
エッセンシャル・ワーカーに「自分のことは自分で」との冷たい言葉

 4月20日のニューヨーク・タイムスは「エッセンシャル(社会に不可欠)労働者の安全衛生問題は国民全般の問題だ」として、標記社説を掲げた。要旨は以下のとおりである。

 新型コロナウイルス拡散防止には外出規制が重要だが、それでも数百万労働者が出勤を強いられている。製造業や食品雑貨、薬局、倉庫、小売業、レストランといった社会に不可欠な部門で労働者同士が肩を接し、感染者かも知れない顧客と向き合っている。
 ウォルマートの労働者は「十分な消毒液や防護服もない中で、体を触れて仕事している」と語り、食肉処理工場では多くの労働者が生産ラインに詰めて働いている。バスなどの大量輸送機関でもマスクや衛生用品が支給されていないと言われている。帰宅すると家族に感染の危険が広がる。
 パンデミック発生から数週間が経過したが、前線労働者への安全衛生の不備は解消されず、問題は引きずったままである。

 対策については、感染症研究の疾病予防管理センター(CDC)がソーシャル・ディスタンシングや消毒設備、マスク着用などの基準を示したが、これは任意であり、強制には労働省の労働安全衛生局(OSHA)による罰則力が必要だ。その、 OSHAは先週ようやく、企業に対してコロナウイルスの安全衛生調査を指示したが、明確な規定もない中で、実態は企業任せになっている。
 この点について、全米食品商業労組(UFCW、130万人)のぺローン会長は「OSHAが明確な指示を示さない中で、企業が『他所で感染した労働者に企業責任はない』とする言い訳が通用している」と述べている。

 ニューヨークやカリフォルニア州では知事が諸規則を出しているが、これは一般州民向けであり、労働者向けではない。職場では更に徹底した規制が必要である。現在のOSHA規則は医療機関に収容されて、幾つかの基準に適合したケースのものだけだ。
 オレゴン州では既に問い合わせを2,747件、イリノイ州でも毎日多数の問い合わせを受けながらも、OSHAは「規定は指針であり、法律ではない」として対応を拒否している。

 コロナ感染症で死亡したイリノイ州のウォルマート労働者の弁護士に対しても、OSHAは「現在のところ、コロナ問題で何かを強制する立場にない」と回答。「企業は自分自身で調査を行い、関係行政機関に報告すること」、つまり、「自分で責任を持て」と述べている。
 仕事の急増に見舞われた通販のアマゾンでは、労働者が「肩を接する状況で仕事をし、手洗いや職場清掃の時間もない」と訴えているが、同社ベゾス会長は「検査設備の拡充を急いでおり、PCR検査を行っている」と述べるに止まる。

 本紙が強調したいのは、OSHAがCDCの枠を超えて、時差出勤や時差昼食、製造業や食肉工場での労働者間障壁、2週間とされているコロナ感染症にさらされた労働者の職場復帰期間の再検討などを行う事だ。ミネソタ州医療局はすでに14日間の検疫期間を定めている。

 企業は新規則が煩わしくコスト高だと言うかもしれないが、コロナを長引かせるほうが遥かに高くつく。米国の5%の豚肉を生産するスミスフィールド食品は数百名の労働者の感染で工場閉鎖に追い込まれたが、小売店のGAPでは「CDC指針に従うことで配達が遅れる」との通知を顧客に徹底して対応している。
 OSHAは病院など、高リスクとされる医療労働者には検査の厳格化を打ち出したが、今回のパンデミックでは倉庫、屠殺工場、市バス、食品雑貨店なども高リスクな場所になっている。感染を鈍化させることで数百万の米国民を守ることが出来るのだ。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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