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No.589(2020/4/14)
コロナからの早期職場復帰のトランプ公約は配慮が不足

 3月24日のワシントン・ポストは標題を社説に掲げ「労働者の職場復帰には相当の日時を必要とする。潜伏期間の長い新型コロナウイルスを考えると、早計に復帰を公約すべきでない」と述べているが、要旨は以下のとおりである。

 2月3日、6寄港地を経由して日本に到着したダイヤモンド・プリンセス号だが、3,711名の乗客・乗員全員の検査で712名が新型コロナウイルス陽性と判定されたが、その内の331名には病気の症状が見られなかった。パンデミックへの対応は大変難しい。ウィルスが呼吸器官の上部に寄生する数日間は、他人に感染させていても、症状が出ない。中国・武漢のケースでも感染者の18%に症候がなかった。インフルエンザにも同様の症状がみられるが、新型コロナウイルスの致死率は高い。多くの人がこのウィルスに感染しながら、気が付かない可能性が高い。

 トランプ大統領は「人々が早期の職場復帰を希望しており、ソーシャル・ディスタンシング(人々が2m程度の一定間隔を開けること)などが実践できれば、そうしたい」と述べているが、感染の連鎖を回避するためには、多くの計画と時間が必要である。
 職場復帰までにはワクチンや薬の開発、治験、製造をはじめ、社会的、医療的、経済的、政治的な複雑な課題を経由しなければならない。病床を整備し人工呼吸器や防護マスクの生産を増強するなど含めて、対策が完了するには少なくとも2021年の初頭までかかる。
 現状の都市のロックダウンから次の段階に進むには、希望的にみて最低2週間以上が必要だが、適切な対策を怠れば、潜伏ウィルスが一気に爆発する危険性がある。

 以上がワシントン・ポストの社説だが、各企業、特に中小企業では、消費者が消えた状況に、今にも倒産の危機を訴えるものが少なくない。その中で、まずは自分自身が感染しない、感染させない防衛手段をとることが必須だが、その上でコロナ対策には数ヵ月が必要だと仮定すると、多くの企業が雇用維持の危機に直面する。各企業は政府や行政などによる各種対策に期待しながらも、幾つかのシナリオを想定しながら生き残り策を模索しなければならない。
 この時こそ、労使が企業の状況について共通の認識に立ち、緊密に協議しながら対応策への合意づくりを行うことが急務である。使用者からの一方的な判断を待つだけでは、済まされない。
 なお3月29日に至り、トランプ大統領は「4月12日の感謝祭までにはコロナは終息し、経済活動が再開できる」としていた見解を変更し「4月末まではソーシャル・ディスタンシング(前掲)を継続しなければならない」と言明した。
 また、3月26日に発表された前週の失業給付申請が従来の10倍となる300万人を記録したが、4月2日発表の前週記録は664万に急増、事態の深刻化が顕著になっている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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