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No.586(2020/4/3)
国民の健康を犠牲にして利益を優先させる企業

 3月11日と14日のニューヨークタイムスは、標記の社説を掲げ、「新型コロナウィルスの蔓延のなか、長年にわたり有給病気休暇の実施を渋る各企業に世論の圧力が強まっている」と述べている。要旨は、次のとおりである。

 アメリカの殆どすべてのレストランには有給病気休暇がなく、病気の従業員は無理して働くか、出勤せずに無一文になるかを余儀なくされる。ある調査では、吐き気や下痢の症状がある食品労働者の20%以上が1年に1回以上、無理して出勤したとされる。
 しかしながら今回、新型コロナウィルス蔓延という事態に遭遇して、低賃金依存のレストラン、小売り企業などは病気休暇の拒否を止めるべき時に来た。そうでないと、従業員だけでなく、顧客や一般公衆の健康をも棄権にさらすことになる。研究でも、病気休暇により季節性インフルエンザの蔓延率が著しく減少したとされるのだ。

 病気休暇が無い、ないしはあっても取れない労働者を推計すると、主要企業のマクドナルドに51万7千人、ウォルマートに34万7千人、サブウェイに18万人などをはじめ、多数の小売り、食品、食料雑貨店にまたがっているが、今回のコロナウィルスでは罹病ないし検疫を受けた従業員にいくつかの大手が1回限りの病気休暇を認めるケースが出ている。

 政治面では民主党と政府の協議により、新型コロナウィルス感染労働者に一部公費負担で10日までの病気休暇を実施することになった。しかし、一時的な対処や臨時の法律改正では対策にならない。再度のパンデミックにどう対処するのか?それには全ての労働者に有給休暇を認めることが必要だ。

 歴史の上でも、病気の流行が契機となって公共医療機関や水道、下水道設備などの社会機構が手遅れながら整備されてきた。米国議会はこうしたパンデミックの教訓に学び、最低7日の病気休暇を法制化すべきである。また、企業経営者が法改正を待つ必要もない。多くの企業が、費用負担に耐えられないと言い訳しながらも、病気休暇を実施している。一般国民についていえば、病気休暇を拒否する企業で買い物をしない、食べないことで自分の健康を守り、改善を促すことになる。

 大手小売りで病気休暇を実施している企業にはコストコやホーム・デポがある。昨日、ウォルマートが既存休暇に加えて、コロナの場合、さらに2週間の休暇を追加すると表明した。
 他方、感染者を出したレストランにあっても、休暇は感染者と検疫者に限るものが多い。
また注目すべきは、病気休暇制度のある企業でも、多数の労働者が休暇を取ったことがないと答えていることだ。

 2017年のノロウィルス流行時に、ニューヨーク市のファーストフード・チェーン(3日間の病気休暇制度あり)の5店で感染が発覚したが、病気の従業員を働かせ、さらには病気で3日休んだ従業員を解雇したことが明らかになり、ニューヨーク市は法律にもとづき罰金を科した。食品中毒のノロウィルスによる感染者は年間2千万人、数百人が死亡しているが、病気の従業員が媒介となったケースが多い。

 有給休暇は先進諸国では当たり前だが、米国では2011年のコネチカット州を皮切りに13州で法制化され、ニューヨーク、シカゴ、ワシントン等の大都市でも実施された。

 その結果は、企業の主張と違って、病気の蔓延防止に効果があり、その費用も相対的に安く、コストは支払賃金の2,7%に過ぎなかった。採算悪化で人員整理や減給が起きたこともなかった。

 以上が、ニューヨークタイムスの社説だ。有給休暇を拒否する企業には組合がないものが多い。かかる企業には法規制が必要だが、労働組合からも立法化に向けて積極的な働きかけが望まれる。同時に企業内における病気休暇の取得状況について、従業員が過不足のない休暇取得ができているかの点検を労使が協力して実施すべき時期にある。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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