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No.585(2020/3/18)
深刻な労働者不足と成長鈍化の怖れ

 2月19日のウオールストリート・ジャーナル紙(WSJ)は表題の社説を掲げ、労働者不足がアメリカの経済成長を阻害すると警告した。要旨は以下の通りである。

 米国政治家は民主党、共和党ともに、「企業はブルーカラー労働者不足と言いながら、巨額の利益を挙げている」と批判する。これに対し、全米産業審議会( 註)(CB:Conference Board)はその調査で「企業は労働者確保に大幅な賃上げを強いられ、利益が減少している」との結果を発表した。

 労働者不足については、ブルーカラー企業の85%、ホワイトカラー企業の64%が募集困難を訴えている。その理由は、高卒以下の労働人口がベイビー・ブーマーの退職で減少したこと、また若年層の大学進学が増えており、16歳から24歳の就職が過去20年間で10%減少したことにある。さらにリーマン・ショックのリセッション時期に退職した多くの労働者が両親ないし政府援助に依存したままにある。

 半面、現在のタイトな労働市場の中で、非熟練と若年労働者の賃金が上昇し、20歳から24歳の賃金上昇率は、その他労働者の2倍に達している。また、各企業が女性や少数民族労働者の募集に力を入れている。このようななか、2018年における労働者の仕事の満足度は、1995年以来の最高を示している。

 しかし、状況は製造業の90%が労働者不足を訴え、29%が減産ないし注文を断るまでになっている。賃金上昇と生産性減退で企業利益は減少を示し、2014年から2019年までの企業利益は一般企業で17%減少、製造業では46%減少した。

 このままでは、企業利益は間もなく過去最低、投資とGDPは減退する。CBは「米国政府が緊急に移民を増やし、労働人口増大と企業振興、労働生産性向上に取り組まない限り、米国民の現行生活水準の上昇傾向は維持できなくなる。」との警告を発した。生活水準の低下と雇用の海外輸出を望まないならば、合法移民を増やすことしかなさそうである。

 以上が社説だが、注目されるのは労働者全般に見られる仕事の満足度の高まりである。労働者不足に伴い、使用者が賃金を増額するだけでなく、労働者を大事に扱っていることが推測される。この傾向が労使関係面で習慣となって定着するよう期待したい。

註:全米産業審議会は、米国の経済団体や労働組合など6,000以上で構成する非営利の民間調査機関である。経済分析や、経済予測などを行っており、公表される消費者指数、景気先行指数などは重要指標として扱われている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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