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No.582(2020/2/25)
英国労組、EUからの離脱で雇用の危機などを懸念
英国国会議事堂
英国国会議事堂

 EU(欧州連合)からの離脱について、英国では、昨年来、国を二分する論議が続いている。ボリス・ジョンソン首相は、昨年12月の総選挙での圧勝を受け、1月31日にEUからの離脱を実行した。これに対して、労組のナショナルセンターである「英国労組会議」(TUC)は「労働者の雇用と権利を危機にさらす恐れがある」として懸念を強めている。

 英国でのEU離脱の論議は以前から続いていたが、2016年6月に国民投票が行われた。その結果、「離脱」が52%の支持を得た一方、「残留」も48%と僅差であった。現在は離脱に向けた移行期間にあるが、ソフトランディングを求める動きと、「離脱」を優先すべきとの声がある。今年の6月末に移行期間延長の可否が判断されるが、「延長なし」の場合は今年末、「延長あり」の場合は最長で2022年12月までに、英国はEUから完全に離脱する。

 TUCがEUからの離脱を懸念する理由は、まず、製造業への影響である。英国の製造業は製品の約5割をEU諸国に輸出しており、離脱によるブレーキが想定される。また、その影響もあり、英国労働者の賃金は週ベースで38ポンド(約5,400円)ほど下がると予測されている。さらには労働者の雇用と権利の問題がある。英国の労働組合はこの間、EUの社会協定の批准を通じて、労働時間・有給休暇、非正規雇用、解雇時の保護などの労働条件の向上をはかるよう求めてきたからである。

 労働条件について、例えば、ある長距離ドライバーは、つぎのように言う。「30年前に陸軍の勤務から離れて民間の運転手となったが、当時は労働時間の制限がなく、週60時間から70時間も働き、徹夜の運転も繰り返さす危険な状況だった。EUの労働時間規制が適用され仕事がより安全になった」としている。サービス関係労組のリーダーには「国内の社会や政治への不満をEU離脱に結びつけるのは誤りだ」との声がある。

 これらの状況を踏まえ、TUCは、国内外でのキャンペーンを続けてきた。例えば、「宿敵」である保守党の所属だがEU残留派のキャメロン元首相と共同で離脱反対のアピールを行った。国際的な対応も強め、2018年7月には日本の連合との共同声明を発表、このままでは現地での雇用に大きな影響を及ぼすとして、両国政府に対して交渉過程への労働組合の参加を求めた。また経営側も欧州産業連盟、全米商工会議所などと日本の経団連が共同声明を発表、英国と欧州が雇用、成長ならびに繁栄のための協定を速やかに締結することを求めた。

 昨年12月、英国国会で離脱が確定したが、TUCは、「EUからの離脱は労働時間などの労働者の権利と仕事を危機にさらす恐れがあり、合意なき離脱となればつけを払わされるのは労働者である」と強く批判、内外へのアピールを続けている。英国政府に対して、「EUと同じ権利を現在及び将来の英国労働者に保障すること、離脱は合意なきものとせず欧州諸国との間で障壁や摩擦のないものとすること、英国で働くEU市民と海外で働く英国民の権利を保障すること」などを求めている。

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