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No.577(2020/1/24)
経済成長がもたらす労働者への恩恵 (経済成長と経済格差の問題)

 12月6日のウォールストリート・ジャーナル紙は「知識人たちは経済成長よりも経済格差の解消が重要と主張する。しかし11月の雇用統計は低所得層の増収のためには労働市場を活性化させる成長経済が最善と教えてくれた」とする社説を掲げた。要旨は以下の通りである。

 11月の雇用増加数は再び26万6千人の増加に転じた。失業率は50年来最低の3.5%にある。今年の月平均の増加は昨年の22万3千人を下回る18万人だが、それでも10年来の健全な成長を続けている。特筆すべきは非熟練、慢性失業者が昨年よりも43万2千人減の120万人へと、27%も減少したことである。パート・タイムも前年比46万人減少し、併せて共稼ぎも減少した。しかもパート・タイムの80%が経済的理由でなく就労している。

 失業はトランプの通商政策によるものもあるが、失業者は次の仕事を早期に見つけている。27週間以上の失業者は最高時の2011年45.2%、2016年12月の24.7%に比べて今年の11月は20.8%に減少した。黒人の失業率は5.1%、10代の失業率も12%と50年来の最低を示し、求人に必死な企業は受刑者にまで活動を広げている。

 他方、今年の企業投資ならびに企業利益も減少しているが、人件費支払いは増加しており、賃金総額は1年前より3.1%増加した。製造業は3.7%、レジャー・ホテル関係では4.3%の増加となった。この傾向が続けば、低所得層が中間所得層に移行し、中間所得層が"富裕層"に入ることになる。別の指標となる家計所得も昨年4.8%の増加を示した。

 企業投資は減少したが、家計収入が増加したことは消費を促し経済を活性化させる。また共和党による減税、エネルギー価格の引き下げ、物価の低下で実質収入が増加した。そのためか感謝祭前後のショッピングが昨年よりも16%増加して、一般家庭の消費増加が顕著であり、景気後退の兆しはない。

 しかし政治面ではおかしいことに、規制緩和と税制改革、資源開発によりさらに多く労働者が必要とされているのに、反対派は増税や企業規制、化石燃料排除や医療価格統制を主張する。資本主義が良質な製品を提供しているのに社会主義が良いと主張する。どこかでヨゼフ・シュンペーターが「そう言ったでしょう?」と話している声が聞こえる。
(訳者註:J・シュンペーターはオーストリア出身の米経済学者。1883―1950。経済成長理論の創始者で、企業による不断の革新が経済を成長させると説いた)。

 以上がウォールストリート・ジャーナル紙の論説だが、経済格差の解消は重要である。過去の事例でも富の偏在は革命を生み、共産主義やファシズムというポピュリズムを生んだことで戦争にも繋がった。そして今、ポピュリズムの台頭が世界各地で顕著にみられる。公正な分配を図るうえで、産業・企業と並んでの労働組合の役割は大きい。

 12月29日の日経新聞は世界最大のヘッジファンド投資家、レイ・ダリオ財団が主張する『理想の資本主義にはパイの拡大と同時に富を適切に配分できる生産性の高いシステムが必要だ。国民に平等な機会を与えて全ての人が繁栄を享受することで、パイがさらに拡大し分配も増えるシステムだ。その実現には政治家や地域住民、企業などと共同で作業する委員会を作り、恵まれない子供への教育を重視しつつ、対策を講じる必要がある』とする活動を紹介しつつ、伴百江担当記者の訴える『希望は民間の行動に』の言葉を載せている。労使への重い課題でもある。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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