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No.573(2019/12/13)
倫理と労働の二重基準(全国労働関係委員会判事の適格問題)と労使関係

 11月26日のウオールストリート・ジャーナル紙(WSJ)は全国労働関係委員会(NLRB)の裁判官の適格問題について社説を掲載した。その要旨は以下のとおりである。

 NLRBにおいては、二重の倫理基準や労働基準を用いた政治的策略により労働法が歪められている。その事例を裁判官の適格・不適格の問題を挙げて指摘したい。

 かつて、NLRBはある全国フランチャイズ・チェーンが本社と共同経営の関係にある単一事業だと判定して労働組合の組織化を認めたが、昨年、エマニュエル判事(共和党選出)が別の事例でその判定を無効にした。民主党は同判事の前所属事務所が共同経営問題でフランチャイズ側を代弁する利益相反関係にあったとして、無効判決を出したエマニュエル判事を不適格だと主張した。

 これを受けて、NLRBは各種機関の裁判官の適格問題を検討したが、確固とした基準がないことが判明した。オバマ政権時代に共和党選出判事が利益相反により裁判を辞任したケースがあるが、同様に疑われた別のケースでは、民主党選出判事は辞任しなかった。

 連邦法は大統領任命の各種判事が自分自身や家族の利害に影響する裁判に参加することを禁止しているが、多くの判事は倫理担当官と相談しながら出処進退を自分で決めている。証券取引委員会では各委員に辞任基準を明示している。連邦裁判所の場合、ケーガン判事がオバマ政権時代の法務次官職に抵触するという理由である裁判を辞退したケースがあるが、多くの場合、以前所属の弁護士事務所の顧客関係で辞任することはない。

 NLRB報告は、同委員会判事に倫理違反があれば大統領が介入するとしているが、関係者のアピールで利益相反を訴えることもできる。しかし民主党が従わない基準にトランプ大統領の任命者が従うべきでない。

 以上が社説の要旨だが、一流紙評価のWSJが使用者側を代弁するその指摘は正しいとしても、公平性と理念を失った主張には驚く。米国企業には労使協議の習慣が無いせいか、労使交渉がもつれると、直ちにストライキか裁判に訴えるケースが多い。訴訟を受けるNLRBの置かれた状況は上記の通りだが、判決は最高裁判所、NLRBを含めて時の政権が任命する裁判官の多数決で変更を繰り返し、安定した労使関係の構築は望むべくもない。

 米国の労使関係は、こうした力対力の政治関係により抜きがたいジレンマの狭間にある。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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