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No.571(2019/11/29)
韓国労総、サムソン電子に労働組合設立

 1969年に設立され、本年50周年を迎えるサムソン電子に11月16日韓国労働組合総連盟(韓国労総)・全国金属労働組合連盟(金属労連)傘下のサムソン電子労働組合(第四組合)が結成された。

 韓国サムソングループの中核企業であり、韓国最大企業かつ世界最大の総合家電、電子製品・部品メーカーであるサムソン電子は売上高23兆7千億円(2017)従業員30万人超を誇る。そして、この巨大企業にはかって50年間本格的労働組合は存在しなかった。

 韓国中央日報およびハンギョレ新聞によると、昨年小規模な三労組が設立されたものの、その規模は合計数十人にすぎず、活動もほとんど無かったようだ。
一方、今回の組合はすでに500人前後の組合員を確保したうえで、上部団体金属労連、ナショナルセンター韓国労総にも加盟し産別・ナショナルセンターの支援も受けながら活発な活動が期待されている。

 新組合は当面組合員1万人の獲得を目標としており、組合員が一定規模に達すれば会社側に団体交渉を要求するとしている。

 初代委員長であるチン・ユンソク氏はサムソン電子労働組合の基本的立場として①特権の無い労組②常時監視を受け容易に執行部が交代できる労組③働く姿がしっかり見える労組④共生と闘争を両手に握る労組⑤協力会社と共にする労組を掲げた。

 また今後の闘争課題としては①給与と成果給算定の根拠と基準の明確化②考課と昇進の武器化防止③退社勧告(常時的構造調整)防止④一方的強要の文化撤廃などを挙げている。

 このサムソン電子労組の基本的姿勢は日本の労働組合と考え方がほぼ同一である点、きわめて興味深い。すなわち民主的な組合運営、対立と協力の健全な労使関係の構築は日本の労働組合が長年に亘って追求して原則であり、ともすると闘争至上主義・組織利己主義に偏りがちだった韓国労働運動と一線を画すものとなっている。

 このスタンスはナショナルセンター韓国労総の基本方針に沿ったものとは考えられるが、一方で世界的に見て韓国の労使関係に対する評価は極めて低い。世界経済フォーラム(WEF)によると韓国企業の国際競争力は総合15位(2018年)であるものの、労使の協力関係の順位は対立的労使関係が支払う社会的費用が大きいとして124位(同)に留まっている。

 この責任は当然組合だけに帰するものではない。ハンギョレ新聞の社説(11月18日付)は次のように述べている。
「今年創立50周年を迎えたサムソン電子は、50年経ってようやくまともな労働組合が設立されたことを恥ずかしいことと受け入れなければならない。グローバル企業の中で労働者の正当な権利を否定するのはおそらくサムソンが唯一無二であろう」としている。そして「サムソンは時代錯誤的な無労組経営を放棄するときになった。労働組合を対話と協力のパートナーとして認め組合活動を保証しなければならない」と記している。

 50年の時を経て結成された韓国労総傘下のサムソン電子労組。出来る限り多くの組合員を獲得し、大きく発展し組合員の雇用と生活を向上させるためにその初心を忘れずに頑張って欲しい。同時にサムソンの経営側は過去に見られた不当労働行為による組合懐柔・瓦解などに決して手を染めることなく、一日も早く健全な労使関係の構築に努めるべきである。

*武器化:部下を従わせるための強力な道具とすること。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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