バックナンバー

No.570(2019/11/22)
シカゴ教員組合がストライキ

 10月17日のウオールストリート・ジャーナルは同日に始まった米国第3位の大きな学校区を持つシカゴ教員労組のストライキについて、使用者側の立場から、財政負担を懸念する次の社説を掲載した。なお、ストライキは11日間続き、10月31日に終了した。

 今春、進歩派のライトフート市長が市政立て直しを公約に当選したが、シカゴ教員労組(CTU)との協約交渉が最初のテストになった。教員労組は3年協約で15%の賃上げを要求、市長は5年で16%を回答したが、組合の3年協約の要求には次期市長選時にもストライキ戦術を行使する意図がある。
 現在、シカゴ教員の所得は物価調整後の実質賃金でニューヨークやロサンゼルスを上回る平均79,000ドルの水準にある。行政側の回答では53,000ドルの初年度教師が5年後には72,000ドルとなる。民間企業労働者にとって5年間で35%の賃上げと雇用保証、低額の医療保険、高額年金は誠にありがたい回答であろう。

 更に市長は回答の中で、学校看護師とソーシャル・ワーカーの倍増を提案したが、組合はそれ以上を要求しており、財政赤字がさらに膨らむことになる。年金赤字は過去10年に4倍に増え、シカゴ市はこの2年間でジャンク(低格付け)の市債をさらに30%増発、そのほか財産税や所得税の増税などで対処している。

 教員組合は富裕者税による資金捻出が可能として、イリノイ州の住民投票に倣って、世帯年収10万ドル以上への累進課税などを示唆したが、市長はこれを拒否。 現在はチャーター・スクール(民間運営の公立学校)に反対する組合要求を呑む方向にあるが、これは一般公立学校よりも大学進学率が20%も高いチャーター・スクールの運営を傷つけることになる。さらに組合は家賃負担の軽減なども要求している。

 こうした要求は昨年最高裁が禁じた政府機関における政治的な団体交渉を意味するものでもある。このためか、昨年も教員1,400名増加の中で組合員が507名減少するなど、多くの教師が教員組合の急進的な政治活動を嫌っている。

 このストライキで教員組合は用務員や運転手、警備員にも団結を呼びかけており、アメリカ教員連合会労組(AFT)のワインガーテン会長は集会で「新市長に教訓を教えるところだ」と言明しているが、納税者と両親にとっての今回の教訓は「公務員労組が行政を担うと何が起きるのかを教える」ものとなった。

 以上に加えて10月31日の同紙社説は、妥結内容が5年間で16%(定期昇給以外)賃上げ、医療保険負担額の据え置き、クラス定員の上限設定、チャーター・スクールの増設抑制などであること、同時にシカゴ市が増税案の作成に着手したことを指摘して、教員組合が自分を相手に交渉したような妥結だと批判した。

 他方、今年5月に就任したライトフート・シカゴ市長はその主張で、中・低所得層への行政改善と並んで現在の教育制度が両親や教職員、学校関係者の声を反映していないとして、教育環境の改善を訴えて、当選した。
 だから、今回の教員組合ストに対する譲歩も、教育の重要性を重視する決断から為されたとみることが出来るが、経費負担の問題など財政健全化の課題にどう取り組むのか、その手腕に期待しつつ、決断の良し悪しは選挙民が判断することになる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.