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No.562(2019/9/24)
サービス労組が民主党大統領候補に政策要求、産別労使交渉制度など

 8月20日のワシントン・ポスト紙はその論説(Opinion)で、サービス労組(SEIU) が提案する民主党大統領候補への政策要求を紹介した。論説記事は“経済困窮報道プロジェクト”(注記参照)諮問委員会のヘレン・オレン委員が提供したものだが、要旨は以下のとおりである。

 米国第2の民間労組、サービス労組(メアリー・ヘンリー会長)は民主党大統領候補に向けて、「最低賃金15ドルのデモ行進に参加しただけで組合支援が受けられるわけではない」とのメッセージを添えて、“Unions for All”と呼ばれる労組支援と労働者の権利擁護に関する主要4政策を要求する。それは

  1. 労働者の団結と団体交渉は地域や産業、職業を横断的に実施可能とすること
  2. 連邦法の労働組合保護に関する部分は最低基準として、上限とすべきでないこと
  3. 政府業務の全ての契約業者は最低時給15ドルの賃金支払いに同意し、労働組合結成に向けて真正な機会を提供すること
  4. 民主党候補が提唱する環境保護対策、“グリーン・ニュー・ディール”などの主要経済政策の中で、労働組合員による業務が中心的位置を占めること

 以上が政策要求だが、これは現行連邦労働法の完全な見直しを迫るものとなる。例えば第1項は産業別労使交渉を要求するもので、マクドナルドとバーガー・キングの労働者などがその相手経営者と共同のテーブルで産業別交渉を行い、地域全体の賃金を決めることになるが、これは世界の先進諸国で広く行われている慣行という。

 ヘンリー会長はまた、フリーランス労働者と契約労働者の組織化を目指して、連邦法を最低基準としてそれを上回る各州労働法を制定すること、また労組結成に携わる労働者の解雇防止を目指して連邦法の強化と強制力の付与を要求している。

 現在、労働組合の組織率は1983年以降半減の10.5%に低下する中、労組の弱体化が国民の所得上昇を妨げ、経済格差を拡大させていると言われるが、陳腐化した労働法、法強制力の弱体化、使用者による労働組合反対など、労組への悪材料は止むところを知らない。

 ヘンリー会長はこうした点について「過半数署名による労働組合結成法に賛成するだけでは事態の改善が出来ない状況になっている。これを変えるには上記政策の実現が必要だ」と語り、さらに「候補者はリップ・サービスだけでは済まない事。政治献金を重視して労組批判派に頼る候補者が存在すること。医療保険と教育への投資、富裕者への増税が重要なこと。候補者は上記政策の承認だけでなく、実現の道筋を示さなければならないこと」を述べ、今年10月には“政策討議の労組サミット”を開催すると語った。

(注記)経済困窮報道プロジェクト(EHRP)は2012年にワシントン・DCで 結成された報道機関で、その報道によりエミー賞やLAプレス・クラブ賞など各種の賞を受賞している。経済格差拡大問題や貧困問題解消を目指して、草の根段階で貧困に喘ぐジャーナリストや写真家を財政支援して、ニューヨーク・タイムスやガーディアン、ワシントン・ポストなど主要新聞への寄稿を奨励しながら、貧困層の声を広く一般国民に知らせる活動を続けている。一般国民から広く献金を募る一方、フォード財団などからも支援を受けている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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