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No.561(2019/9/20)
韓国郵政事業の根深い問題~韓国郵政労働組合(KPWU)スト回避

 韓国郵政は、今では世界でも少なくなった国営の事業であり、科学技術情報通信部(Ministry of Science and ICT)に属している。労働組合は、韓国郵政労組(KPWU)が2万8,000人の組合員を有し、圧倒的多数を組織化しており、韓国労働組合総連盟(FKTU)に加盟している。他方、全国民主労働組合総連盟(KCTU)系の労組も存在しており、主に集配等の職場で働く少数の非正規労働者を中心に組織している(組織人員約200人)。
 この韓国郵政に対し、KPWUが7月9日からのストを宣告し、緊張感が高まったが、政府の介入もあり、スト決行前日KPWUはスト回避を決定した。
 しかし問題の根は深い。この間、韓国郵政の職場では過労死が頻発しており、KPWUは労働条件改善を目指し、交渉を進めてきた。その結果、「土曜日の完全休配」と「1,000名の増員」を勝ち取った。これらは労働協約に成文化され、使用者としては守るべき義務となった。ところが、韓国郵政は協約実施の引き伸ばしを図った。KPWUは労働委員会に問題を持込んだが、使用者側は予算がないと譲らず、調停不能となった。

続出する過労死

 いま、全世界の郵便事業は大きな転換期にある。どの国でも郵便物が逓減するのに対し、Eコマース(電子商取引:ネットショッピング)による小包が急増している。しかし、郵便配達は国民に対する義務として法律に定められており、使用者側の一存でサービスを低下させるわけにはいかない。
 そして、どの国でも小包は競争により値引き合戦が行われ、利ざやは小さい。こうした状況のなか、郵便職員の負担は増え続けている。
 韓国では、この構造的問題の現れ方が特に顕著で、これまで多くの郵便職員が過労死した。韓国の平均労働者の年間総労働時間は長く、2052時間であるのに対し、郵便集配労働者は2,745時間働いている。(6月26日ジョナンデイリー)
 また、KPWUによれば、2013年からこれまで、郵便局の配達員など250人あまりが過労死し、今年に入ってすでに9人が亡くなっている。(6月25日KBSワールドニュース日本語版)
 5月13日、6月20日にも集配労働者の過労死が起きた。リー・ドンホKPWU委員長は6月20日葬儀の席上で「もはや看過できない」とスト決行を宣言した。6月24日スト権投票が行われ、組合員の92.87%が賛成した。(6月25日コリアタイムス)

難航した交渉

 この交渉は困難を極めてきた。すでに述べたように、「土曜日の完全休配」と「1,000人の増員」は協約に明記されている。これは長期にわたる交渉の結果勝ち取ったものだ。しかし、ここ数年来の小包の急増と競争の激化は土曜日の配達を不可避とした。また、2011年以来韓国の郵便事業は赤字であり、昨年は1450億ウォン(約133億円)、今年は2,000億ウォン(約184億円)の赤字を見込んでいる。この状況の中で、1,000名の増員の実施も遅れに遅れたうえに、「出来ない」となった。
 KPWUは6月11日全国労働委員会に調停を申請した。この制度は労使に公益側代表が加わって、調停委員3名で調整作業を行うが、使用者側の態度は「予算がない」と固く、結局、労働委員会を通じた調停は6月26日の期限が来てもまとまらなかったので、さらに5日延長したが、結果は同じであった。

政府の介入

 ここで登場したのが、政府である。李総理が7月4日「政府は集配員がこれ以上過労で倒れないよう労働条件を積極的に改善していく」「これまで一度もストをしたことがない郵政労組の気持ちは良く分かっている。今回も労使双方が調整し、ストが生じないように願う」と語りかけたことを受けて、7月8日リー・ドンホKPWU委員長がスト回避を決定するという新しい局面を迎えた。労使交渉は政府の介入を経てスピードアップし、何とか合意に達した。郵便労働者は国家公務員であり、週52時間労働が定められている。実際には、1週間おきに土曜日に仕事をすることになっており、配達の前後の時間彼らが郵便と小包の区分に費やす時間は労働時間にはカウントされていない。
 KPWUは合意内容の即時の実施を求めている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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