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No.559(2019/9/13)
労働者の権利とマスコミ報道

 お盆週間の真っただ中8月14日東北道・上り線佐野サービス・エリア(SA)の売店・レストランのストライキをめぐって、様々な報道が流れた。

 8月15日付朝日新聞では「14日未明からレストランや売店の営業が突然休止した」「佐野SAは年間の利用客が170万人。佐野ラーメンやギョーザを目当てに立ち寄る人も多く横浜から家族と訪れた会社員(51)は困り顔だった」
 また、16日のTV朝日は会社が新たなスタッフを導入して営業を再開したとして、「ご迷惑をかけました、また新たな思いで頑張ります」との社長の言葉だけを伝えていた。

 これら新聞・テレビの報道に対し、8月21日付東京新聞、斎藤美奈子氏(文芸評論家)「本音のコラム」は新聞やTVが組合の存在をどう捉えているか、その問題点を指摘している。

(要旨)
 「今般の日本では『ストライキ』という言葉すら禁句なのか。東北自動車上り線・佐野SAで14日から続いている従業員のストを伝える報道はメマイがしそうだった。営業休止・店舗休止・就業拒否などの漠然とした表現。『通常ならお盆で混雑する時期の出来事に戸惑いや落胆が広がっている』(朝日新聞・15日)などの迷惑そうな語り口。経営者的視点消費者視点ばかりの報道ばかりなのが気になる。曖昧にされる労働者の権利」

 売店・レストランの運営企業ケイセイ・フーズの労働組合は連合栃木ユニオンに加盟している。
 連合栃木によると、ことの発端はケイセイ・フーズの経営不振。企業の将来に不安を感じた従業員たちが今年1月に労働組合づくりの活動を開始し、7月に結成、同月企業の経営改善・職場環境改善を求めて団体交渉を開催した、しかしながら、経営不安は解消せず取引先からの商品納入拒否が始まった。8月に入りケイセイ・フーズ総務部長と佐野SA売店・レストラン支配人(労働組合委員長)二人が事態打開のため、社長に対し再度経営改善の申し入れを行ったところ、8月13日に社長は総務部長解雇、支配人出勤停止の通告を行った。
 売店商品やレストラン具材の納入が不安定で正常な販売ができない中での会社側の強硬措置に反発して始まったのが14日早朝よりのストライキである。翌15日には解雇・出勤停止の措置は取り消され、その後団体交渉も再開されたものの、8/30現在事態打開には至っていない。
 なおケイセイ・フーズ労組は支援を求めて8月20日に連合栃木ユニオン(合同労組)に加盟し、連合栃木のメンバーになった。

 会社側の代替え要員導入による営業再開は明らかにスト破りであり、憲法に保障する団結権の侵害とする説が有力である。こうしたことを知ってか知らずか、ストライキの原因やその妥当性あるいは労働者の権利に言及することなく、興味本位にまた経営者の取った行動があたかも正当であり、消費者の利便性復活を好ましく報道するマスコミの姿勢には疑問を抱かざるを得ない。
 こうした一連のマスコミ報道における労働組合の扱いについては、各社の労働担当記者の減少による労使関係に対する理解不足が一義的な要因であろうが、そもそも社会が経営優先・消費者優先、言葉を変えれば生産性・効率優先となり、それらを阻害する労働者の権利行使(ストライキ等)に対しての寛容さを失っていることが背景にあると考えられる。

 ケイセイ・フーズ労組は組合員73名の小労組である。連合の支援を求めて合同労組である連合栃木ユニオンに加盟した。
 共に協力して事態打開、組合員が安心して働ける職場の確保、経営の改善を進めていってほしい。同時に消費者、社会に対しても労働者の権利を守ることへの理解にも繋げていってほしい。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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