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No.558(2019/9/2)
ロシアの郵便局の労組活動

【ロシア通信労組】

 ロシア通信労組は、郵便、テレコム、放送、通信関係警備会社を組織し、全国で約50万人の組合員がいる。ロシア通信労組の組織を見ると、主体である郵便とテレコムで、50~60%を占める。問題なのは携帯テレコム会社で、全てに組合は存在せず、労働協約もないことだ。

【ロシアの郵便局の現場の実態】

 ウラジオストクから100km離れたところにウスリースクという人口18万人の町がある。この町の郵便局員の数は全体約500人で、220人が外務員、残りがオペレーター(内勤区分職)、事務系労働者となっている。
 今ロシアの郵便局は大きく変わった。外務員は、郵便配達のあいだにカタログを持って、各家庭を周り、様々な商品、から日用品まで扱う営業活動に従事する。各自にノルマがあり、達成状況に応じて賃金が支払われる。郵便外務員の給料は総じて安いが、給与に占める販売手当の割合は概ね50%あり、収入がかなり良い者もいると言う。労働組合の組織率は60%程度で、若者は比較的組合加入率が高いが、1%の組合費を払う金もないという人々は、加入しないのが実状だという。ここの組合活動は組織化と経営側とのコミュニケーションであり、職員の先頭に立って奮闘している。

【労使関係の実態

 労働協約はモスクワで締結され、地方交渉はない。しかし、問題が発生するのは現場である。だが、労働協約には職場の紛争解決ルールの記述はない。例えば、ある郵便局で問題が起こると、そこの組合支部長が同じく郵便局長と直接話し合うことになる。組合の縦のラインが当局側の縦のラインと並行して作られているので、両者が話し合えば良いということだろう。しかしこのシステムでは包摂できない問題も出てきている。
 昨年12月19日付けヤンデックス・ニュースによると、ペテルブルク地方裁判所は、郵便配達員ピョートル氏に、解雇されていた期間の賃金と解雇に対する損害賠償として21万ルーブルを支払い、同時に彼の職場復帰をロシアポストに求める判決を下した。
 2017年、彼の同僚が産前休暇に入り、残りの郵便外務員は週6日働かなければならなくなったことを告発したビラを作ったことで、彼が解雇された事件である。
 彼が旧職場に復帰した最初の出勤日にロシアポストは彼に仕事を与えなかったと記事にはある。このような問題が起こること自体、職場の労使関係を規律するルールがないことに起因すると思われる。
 ロシアでは社会的パートナーシップが、労使関係を律する原理として置かれており、これはILOの原理原則とも合致する。1991年「社会的パートナーシップと労使紛争の解決についての大統領令」を皮切りに、1996年「労働組合、その権利と活動の保障法」、1999年「社会・労使関係の規制に関するロシアの三者構成委員会についての法」さらに地方版の社会的パートナーシップ協定が次々導入されていった。
 沿海州でも社会・労使関係の規制に関する三者構成協定がウラジオストクの政労使によって結ばれている。2008年にはこの協定への署名を経営側主要300社が拒否するという事件も発生したが、2017年には社会的パートナーシップ学院が創設されるなど大きな前進が見られている。(沿海州労組連合「客観的に見た労働組合2008~2018」)しかし、ロシアポストのような大企業でも職場の労使紛争解決規定がないというのが現実である。

【今後の問題

 今、ロシアポストの最大問題は民営化だ。すでに昨年7月100%国家所有の株式会社とする法案が議会を通過しており、今年中に組織の変更が行われる。しかし、ロシアポストの民営化はほとんど職員に影響を及ぼさないという。なぜならロシアポストの職員は国家公務員ではなく、組合としても経営上の効率性を高めるという理由で民営化の必要性を認めている。8月29日にモスクワで中央委員会が開催され、ロシアポストの組織変更について討論が行われるそうだ。ロシアの郵便局は20年前と比較すると、若者が増え、明るくなった。営業活動など以前は全く考えられなかったが、今では当たり前のことと受け止められている。今後民営化を経てどのように労働条件や職場の紛争解決システムを含めた労使関係が変わっていくか注目に値する。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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