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No.544(2019/6/3)
日本的雇用慣行の行方

 昨今経済界トップから日本的雇用慣行見直しへの発言が相次いでいる。
 4月26日の朝日新聞は経済同友会の代表幹事の櫻田謙悟氏(63―SOMPOホールディングス社長)の声として、日本の雇用慣行となっている就職活動のルールを前提とした新卒一括採用制度について、「個別企業の問題だが、やめた方がいい。原則はキャリア(中途)採用であるべきだ」と伝えている。

 また、経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は5月7日の定例会見で、終身雇用について「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と改めて持論を展開。「雇用維持のために事業を残すべきではない」と、経営者に対して新しいビジネスに注力するよう訴えた。

 さらには、トヨタ自動車の豊田章男社長は5月13日の日本自動車工業会の会長会見で「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べた。

 5月14日付け日経ビジネス・インターネット版によると、豊田社長は「今の日本をみていると、雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘した。経団連の中西宏明会長も「企業からみると(従業員を)一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」と話し、いずれも雇用慣行の見直しを唱えている。

 同紙は、グローバル化と急速な技術革新による「100年に一度の大変革期」(豊田社長)において日本的雇用の前提は崩れ始めている、との見方を示している。

 今後日本の雇用慣行・労使関係はどう変化しようとしているのだろうか。
 終身雇用・年功序列・新卒一括採用・企業別組合などは日本的雇用慣行・労使関係の特徴とされ、1960年代~80年代の日本の成長の原動力となってきた。

 経済界トップの発言はこのうち今のところ、終身雇用、新卒一括採用に関するものにとどまっている。しかし言うまでもなく、企業別組合を除く3つのシステムは相互に関連しており終身雇用あるいは新卒の一括採用のみを変更するわけにはいかない。

 新卒を低い初任給で一括採用し、社内で教育訓練を施し、職能を高め、勤続年数に応じて給与と職位・職級が上昇していく年功序列(賃金)制度。
 この仕組みは定年制度があって初めて機能する。基本給の底上げ・ベースアップを別にすれば、年功で賃金が上がる定期昇給による人件費増を定年によって防げるからである。

 終身雇用・新卒一括採用を廃止すれば、新入社員といえども即戦力となれば給与は格段に上昇せざるを得ない。そうなれば勤続年数による昇給・昇格もなくなり、年齢による格差は極めて少なくなるだろう。また逆に、定年制を設ける必然性もなくなる。

 経済界首脳の一連の発言が注目を浴びているが、多少の変革はあっても50年以上続く日本的雇用慣行を抜本的に変更するとなれば世紀の大改革になろう。労働者の働き甲斐、やりがい、生産性向上、産業企業の競争力強化に資するものでなければ意味がない。労使の多角的で真剣な論議が望まれる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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