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No.543(2019/5/27)
シカゴ交響楽団のストライキが妥結

 4月25日のワシントン・ポストは「2か月間続いたシカゴ・シンフォニーのストライキがシカゴ市長の仲介で妥結した。指揮者のリッカルド・ムーティ氏も間もなく復帰する」と報じたが、妥結の詳細は明らかでない。4月3日の同紙では「100人の楽団員がロサンゼルス・フィルハーモニックなどと比較して低水準にある給与と年金の改善を求めてストライキの継続を決めた」と伝えていた。

 米国には200以上のオーケストラがあるが、中でもボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、クリーブランド管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団が“ビッグ5”と呼ばれ、それにロサンゼルス・フィルハーモニック、サンフランシスコ交響楽団が有名である。

 シカゴ交響楽団は1891年に実業家のノーマン・フェイ氏により創立されたが、当時の名称はシカゴ管弦楽団(Chicago Orchestra)であった。その後120年以上の歴史の中で、筆者の記憶にも強く残るフリッツ・ライナーやゲオルグ・ショルティ、ダニエル・バレンボイムなどの名指揮者に恵まれて名声を確立し、2010年からは現代最高と言われるリッカルド・ムーティ氏を指揮者に得て、数々の記念すべき名演奏を残している。今年1月日本でも、2016年以来の再来日の際に「ムーティ、シカゴ聴いた?」という合言葉が出来るほどの強い興奮をクラシック音楽ファンに与えたと言われる。

 しかし、今回のストライキは現代の何れの交響楽団もが経験する財政難を示すもので、シカゴ市長の仲介が表すように、地方自治体や公共団体による支援の重要さを改めて印象付けた。大切な文化を守るために一般市民、そして労働組合もどのような積極的な支援が出来るのかを考えさせる出来事でもある。
 それと同時に反省は、日常の労使協議制が定着していればストライキなしに問題が解決できたかもしれないということである。しかし近年の米国の労使関係の一般的風潮としては、労働組合の衰退に伴って、対等であるべき集団的労使関係が経営優位の個別的労使関係へと変化しており、一方的な経営判断がしばしば問題を起こす。それに対抗する労働組合のストライキで労使関係は一層緊張する。労使の話し合いがなぜ定着しないのか、銃規制問題と合わせて筆者に理解ができない米国の問題の一つである。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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