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No.536(2019/4/12)
アマゾン社の労働問題

 巨大インターネット通販会社でGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの4社の米国主要IT企業の頭文字をとって総称する呼称)の一つ、アマゾン社が現在のシアトル本社に加えて、ニューヨークなどに第2本社の候補地を物色中だが、候補先の労働組合からは改めて警戒感が強まっている。

 アマゾン社の従業員数は2018年には650,000名を数える。従業員は希望実現(Fulfillment)センターと呼ばれる各地の巨大商品保管センターに働き、顧客の注文を受けてそれを発送する。

 会社は常に効率的かつ急速な技術革新を追い求め、ロボットなどの技術導入にも熱心に取り組むが、円滑な運用を図るためマネージャーと一般従業員とのコミュニケーションには特段の注意を払うといわれる。賃金水準もウォルマートなどよりは高く、最低時給は15ドル、医療保険や育児休暇、ボーナス、株式オプションもある。従業員の抱く雇用不安や不公平待遇などには苦情受け付けや相談制度もあるという。

 しかし一方、「労働組合は会社と従業員との直接対話を阻む存在であり、労働組合からの干渉は操業を著しく阻害する。」として、従業員の動向を常に監視し、関与者の解雇処分もなされているとも伝えられる。
3月20日のNYタイムスは「組合結成を唱えた労働者の解雇を違法であると提訴した小売デパート労働組合に対し、アマゾン社は安全規則違反が理由だとした。」と報じた。

 2018年7月8日のガーディアン紙は「アマゾン社は、1994年の創業以来、一貫して労働組合を嫌い、2000年には全米通信労組(CWA)による400名の顧客センターの組織化を避けるため、会社再編の一環だとして同センターを閉鎖、2014年には電気技師と機械技師グループによる全国労働関係委員会(NLRB)への労組結成投票の申請に対し、弁護士や会社集会などを使って反対させた。2016年にはデラウエア・センター(3,000名)での全米機械工・航空宇宙労組(IAM)の組織化に対して投票対象者を27名に押さえ込んで21-6で否決させた」と報じ、さらに「アマゾン創業者ジェフ・ベゾスCEOの持つ世界1の資産、1,400億ドルは労働者の犠牲の上に築かれた。公平な配分を実現するには労働組合が必要だ」と提起している。

 また、2018年5月2日のNYタイムス紙は、アマゾン社について「本社勤務者の年収は10万ドルから20万ドルだが、2017年の会社発表による全従業員中位年収は28,446ドルであり、企業内に持てる者と持たざる者が存在し、実はセンター勤務者の年収はかなり低い。」と報じている。

 ここに見られるのは労働コストをはじめとして様々なコストを削減し、消費者の求める良質で低価格な商品と迅速な配送による利便性を提供しようとする会社の姿である。
 消費者はこうしたサービスをアマゾンだけでなく、様々な企業から享受する。反面、そこに働く労働者の賃金をはじめとあらゆる労働条件が問題となる。消費者でもある労働者は、これらのサービスを享受しながら、それらの企業を非難するという矛盾を見せる。

 西欧諸国や日本に広まった生産性運動は、労働者が生産性向上に協力して引き下げたコストにより利益の増大を図り、その利益を消費者には価格の引き下げ、労働者には賃金労働条件の改善、株主には還元利益の増大という形で公正に分配する」ものである。日本では主要な産業別労組がこの運動に参加している。

 アマゾン社の問題は、この「労働者に対する公正なパイの分配」にある。西欧諸国には、ドイツの労資共同決定制度やEU諸規定に盛られた「権利と価値の共有」という民主社会主義的社会観があり、日本では、社会的平等感を大切にする価値観を基底に、戦後の労働運動や労使関係者が公正なパイの分配に努力してきた。
 しかし米国にはこれらのことが無く、分配は弱肉強食の放置状態にあると、推察する。自由を標榜する米国だが、米国労組には確固とした社会観が無いまま、組合員の利益だけを考えた闘争、抵抗運動を繰り返すように見える。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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