バックナンバー

No.534(2019/3/1)
アメリカの労働事情

【なぜ教員ストライキに休止の兆候が見えないのか】

 2月11日のワシントン・ポストの社説(Editorial opinion)はロサンゼルス統一教員労組カプートパール委員長による標題の手記を載せたが、要旨は以下のとおりである。

 昨年、米国に1986年以来となる53万3千名のストが発生した。その中心となったのが公立学校教育への長年の予算削減と政府の無関心に痺れを切らした教職員達で、ウエスト・バージニア州から始まり、オクラホマ、ケンタッキー、アリゾナ、コロラド、ノース・カロライナ各州に飛び火した。今年には、ロサンゼルス教員3万3千名がストライキに入り、6%の賃上げに加えて学級定員の削減、看護師、カウンセラー、図書係の増員、標準テストの縮小などを勝ち取った。

 カリフォルニア州経済は世界5位に位置するが、2017年の児童1人当たり支出は米国46位、チャーター・スクール(私営の公立学校)増設には規制がなく、一般公立学校の増設を妨げている。ロサンゼルスのストライキには98%の教員が参加し、両親たちから力強い支援を得た。そこに見られたのは州民が私営ではなく一般公営学校を希望している事、児童のためには教員と両親が協働すること、そしてストライキに効力がある事であった。

 教職員ストは今、カリフォルニア州オークランドでも予定され、メリーランド州やテキサス州でも計画が出てきた。要求は何れも数十年の教育予算削減に反対する予算増額である。教員ストを支援する両親、児童たちは学級定員問題のほかに、必要とされるものが与えられていないと言う不満がある。世界一富裕な国にあって、問題となるのは資金不足でなく政治的意思の欠如だ。政治が教育予算の増額を渋るようであれば、教員と両親、児童たちは公立教育と言う基本的市民制度を守るために街頭に立ち続けることになる。

【教員ストの背景にあるものー教師の責任逃れ】

 昨年初めから頻発する教職員ストについて、2月13日のウオールストリート・ジャーナル紙は以下の評論(review & outlook) を載せた。同紙は使用者側に立つと思われる新聞で労働組合には批判的であり、評論は皮肉交じりに難解な部分もある。

 「現在のデンバー市の教員2,600名のスト、そして各地に広がる教員ストは“子供のため”“賃上げのため”と言われるが、背景にもう一つ、児童の学業成績への責任逃れがある点に注目しなければならない。

 デンバー公立学校区(DPS)は25年来初めてとなる、デンバー教員組合(DCTA 5,700名)によるストライキに直面している。9万2千名の生徒を担当するこの組合の真の目的は賃上げよりも成績ボーナスの撤廃にある。このストでDPSは2019年に11%の賃上げ、その後2年間の賃上げ、そして特別授業などの必要がある貧困地域の学校教師には現行ボーナス2,500ドルを3,000ドルに増額すると提案した。
 しかし組合はボーナス増額を児童の学業成績にリンクする成績給を補完するだけの“侮辱”と解釈して、複雑なボーナスではなく、年功、教育程度、経験による基本給と確固たる年功昇給のある賃金制度を要求している。

 一方現実は、全国各地の学校区は児童の学業成績に教員報酬をリンクする方法で良質の教師を確保してきた。2011年のウイスコンシン州では、ウオーカー前知事による団体交渉制度改革(公務員の団体交渉権の制限など)により成績給の実施が可能となった。その結果、児童成績を向上させた教師が昇給出来る学校区へ集中するようになり、かたや低質の教師達は、安定的で年功的な賃金制度のある学校区に止まる結果となった。
 デンバーでは成績給が難解だとする教師達の指摘に対し、DPSは透明性を高めるために教師との話し合いや協議の機会を増やすことにしたが、安定的で年功的な賃金制度のある学校区での生徒の教育は、明らかに失敗を示している。

 いま、各地の教員組合は教育実績を上げるという本来の重大事から関心を逸らすように、逆に攻勢を強めている。ロサンゼルス教員組合は賃上げ要求に加えて、チャーター・スクール(私営の公立学校)設立の休止を迫っている。
 ニューヨーク市では昨年締結の労働協約の下で、学校長が解雇ないし減給処分と判断した教師が、昨年締結された協約により、処分ができないままに置かれ、他方、チャーター・スクールはあと8校しか開校できない状況にある。
 コロラド州では学校運営費捻出への増税案が住民投票で否決され、打開策は学校区経費の削減か成績給の減額しかない。それでも教員組合は組合の最後の心は“子供たち”だと言う。」

 執筆者注:この原文は、皮肉を交えて反語的な難解な部分が多く、よって読者に分かりやすいよう意訳を試みた。その点を十分にご留意ただきたい。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.