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No.528(2019/1/10)
最低賃金$15が全米レベルの課題に

 11月22日のウォールストリート・ジャーナルは連邦最低賃金15ドルへの引き上げについて、使用者側を代弁すると見られる立場で論評(Commentary)しているが、その要旨は以下のとおりである。

 民主党にとって2019年の最大課題は最低賃金の15ドル実現だと思われるが、民主党多数の議会にあって共和党に反対を貫く元気があるかどうか分からない。

 過去5年間、最低賃金についての民主党の主張は過激さを加えた。2013年にオバマ大統領は9ドルを理想としたが、翌年民主党は10.10ドルを打ち出し、2015年には共和党議員が12ドルを提案、2017年にはサンダース上院議員(民主)などが15ドルを主張して、サービス従業員国際労働組合(SEIU)が同調した。
 歴史的に最低賃金引き上げは緩やかであった。1938年の最初の最低賃金は0.25ドル (2015年の物価調整後では4.20ドル)であり、当時は鉱山や製造業、運輸などの熟練労働職が対象であったが、その後サービス産業も包含するようになって非熟練職も対象となった。
 現在の連邦最低賃金は7.25ドルだが、この水準にあるのは労働者の3%未満であり、ある調査では2020年に44%の労働者が15ドルの最低賃金レベルに達すると予測されている。

 他方、SEIU役員が述懐する「最低賃金目標は10ドルでは低い、20ドルでは高すぎるので15ドルにした。」とする2014年当時の状況から、引き上げにはかなりの無理が見られた。サンフランシスコ地域の調査でも最低賃金1ドルの引き上げ毎に中級クラスのレストランの閉店が14%増加していた。

 民主党は最低賃金とその水準にある労働者数が2009年以来変わらないとしているが、労働省統計では最低賃金水準の労働者数、率の双方とも2010年以降毎年減少している。現在では、労働需給の逼迫と税制改革によって、アマゾンやマクドナルド、ウォルマートなど多くの企業が賃金を15ドルに引き上げており、労働組合が主張する政府による強制力の必要はない状態だ。

 以上がウォールストリート・ジャーナルに掲載された論評だが、どう見ても現在の7.25ドルは異常に低すぎる。最低賃金実施当初からの物価調整でも10ドル前後と言われ、共和党の反対にも限度があると思われるが、トランプ政権実現後この課題は完全に放置された。
 2018年の中間選挙で民主党が下院議会の多数を占める2019年1月の開会以降、民主党の提起により、改めて下院と上院で最低賃金問題が公式課題として議論されることになる。
 “ねじれ議会”と言われるが、労働者のためのこうした議題が改めて公式に議論される状況が生まれた意義は大きい。共和党多数の上院と民主党多数の下院とでどのような議論が交わされ、最低賃金がどの水準に落ち着くのか注目したい。共和党に否定された課題は最低賃金だけでなく、オバマケア医療保険法、労働組合結成を容易にする過半数署名による労組承認など多くの法案がある。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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