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No.526(2018/12/21)
ミャンマーの労使関係のいま

 2018年11月、JILAFとミャンマー労働組合総連盟(CTUM)との共催で「労使関係・労働政策セミナー」を実施した。2011年、ミャンマーが軍事政権から民政移管した後の2013年からの取り組みで、今年で6回目を迎えた。
 今回のセミナーは、CTUMの労働組合リーダーに加えて、政府労働行政関係者、経営者協会含む使用者の3者が参加した点で、セミナーのテーマである「建設的な労使関係の構築」に向けた、意欲的な取り組みになったと言える。
 全体としては、長い講義に参加者が辟易としそうになった場面も時としてあったが、CTUM側事務局リーダーの創意工夫による参加関与型の運営によって、大いに盛り上がった。発言者は、ものおじせずに自分を表現する方たちばかりだった。しかし、話せば話すほどに大声になるのには驚いた。
 印象に残る発言があった。経営者と労働者の間にいる管理職の立場を、涙ながらに訴えたものだ。「経営者が、労働組合を認めようとしない。労働組合との話し合いが少しでもうまくいかないと、話を止めてしまう。私だって労働者だから、経営者にはものを言えない。労使関係を調整したいが、我慢せざるをえない。経営者はミャンマーの法律を知らないし、守らない。かといって、会社のルールを守る労働者も少ない。」その方は、労使どちらにも偏らずに率直に話しをした。労使関係の生々しい現場の実態だと私は感じた。
 労働者の権利を守り、建設的な労使関係を構築するには、それを支える法制度、民主的な行政機関の存在、労使の現場現実での不断の努力が欠かせない。
 2016年に発効したミャンマーの「新経済政策」では、経済運営の基本方向とともに国際労働基準への対応も提起された。2015年から、EU、米国、日本、デンマーク、ILOが連携・役割分担をして「基本的労働の権利と労働慣行の促進イニシアティヴ」を開催し、国際労働基準分野の支援に取り組んでいる。そのなかで、日本の専門家が労働法改正分野の実務を担ってきた。その専門家は、ミャンマー人専門家の不足、その原因として労働法分野の教育みならず基礎教育の遅れが円滑な法改正を阻むことの本質だと総括していた。軍政下の非民主的な政治が、教育を停滞させた反動は深刻だと分析する。
 しかし、ミャンマーは、十分ではないにしろ問題に立ち止まってはいない。行政側は、職場、地域、そして個人、団体の労使紛争の解決機関が設置され、稼働しつつあることを報告した。また、経営者協会は、建設的な労使関係が生産性向上につながるのだという信念を披歴し、その活動を紹介した。また、投資法の整備だけでは、海外からの投資は呼び込めない、建設的な労使関係に向けて政労使が連携することが投資を生み、雇用を拡大するとし、このセミナーの学びを実行に移すことを訴えた。CTUMは、セミナーの冒頭、建設的な労使関係構築に寄与する、労組のトレーニングセンターの建設の完成を急ぐと表明した。
 発言者の涙の訳は、現場で思い通りいかない悔しさもあったのだろうが、このような場が持たれ、自分がそこで発言できることへの感動でもあったようだ。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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