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No.525(2018/12/18)
GMが人員整理計画を発表

 11月27日のウオールストリート・ジャーナルに掲載された「GMの米国・カナダにおけるホワイト・カラー従業員の15%削減と5工場(6,700名)の閉鎖計画の発表について」の論説の要旨(Opinion) は次のとおりである。

 GMのメアリー・バラCEOは「市場の急速な変化を前にして、会社と経済が強い状態にある現在に行動を起こす」と述べて、小型車工場を閉鎖し、浮かした年間$45億をトラックや電気自動車、自動運転車に振り向ける計画である。 これに対し、トランプ大統領は「国はGMを救済した。工場閉鎖は良くない。GMに対する補助金を打ち切るかもしれない」と述べて人員削減を非難した。

 しかし自動車市場の動向は2012年に半数を占めた小型自動車が今や3分の1に、同年60%のシェアのトラックとクロスオーバー車は昨年75%に伸びている。 10年前、GMが破産に至った原因は企業競争力を削いだ労働協約にある。当時のGMはコスト削減や不採算工場の閉鎖ではなく、販売値引きで事態を乗り切ろうとした。しかし市場動向は変わらず、GM経営者は崩壊を回避するには競争力の維持が必要と気づいた。 GMはフォードやF・クライスラーの小型車削減を見習ったのだ。少量であっても小型車生産の維持は人的資源と資金の浪費であり、高利益車生産への投資を妨げる。

 現在の状況はトランプ政権による燃費基準の緩和で自動車メーカーの利益は改善し、北米におけるGMの第3四半期の利益は37%上昇した。8年続いた好況で自動車生産はピークを迎え、金利上昇が予測されるこの時期に、高利益車へのシフトは不可欠である。一方トランプ関税で資材価格は上昇、このためGMの原価は$7億増加するが、これは9,400名の賃金に等しいという。

 また、GM最大の市場、中国では昨年米国より3分の1多くの車が販売され、政府は電気自動車の割り当ても行った。競争力維持のためにはGMの中国生産は不可欠であり、特に中国が米国への報復として関税を15%から40%に引き上げた現在、中国での生産の必要性は高い。 最近締結されたUSMCA(米国。メキシコ・カナダ協定)の中では北米生産部品の40−45%が時給$16以上の賃金で製造される事とあるが、その論理の背後には関税と管理貿易による政策で米国が鉄鋼と自動車中心の経済に戻れるとの期待が読み取れる。

 しかしGMは昔の製造企業から近く技術企業に生まれ変わる。時給$16の賃金条項にメーカーの不安はない。生産の大部分は高度熟練のエンジニアーが占める。閉鎖する小型車工場でもトラック生産が始まるであろう。トランプ大統領は貿易政策の操作で市場動向を変えられると考えているが、それはオバマ大統領が気候問題と法規制に誤りを見せたと同様に、間違いだ。

 論説が伝えるところは以上だが, 他方、こうしたGMの人員整理計画に直接対峙しなければならないのが全米自動車労組(UAW)である。UAWはもちろん工場閉鎖に反対、非組合員も交じるホワイト・カラー従業員を代弁して交渉を展開する事になろうが、車がハードウエア機能から電子機器などソフトウエア機能重視に変化し、他産業による自動車参入が言われる自動車業界の常識を前に、10年前GMとクライスラーの破産に苦しんだ労組が、今回単なる反対で済むのかどうか。

 2016年の大統領選挙の時にはクリントン支持を決めながら組合員をトランプ支持に走らせたUAW執行部、そして最近ではトランプ政策への支持を可なり鮮明に打ち出すUAWだが、現在の産業状況にどう舵取りをするのだろうか。その対応が注目される。また来年9月には4年の労働協約の改定を迎え、労使交渉が始まるが、執行部の見識と指導力が試される。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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