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No.520(2018/10/31)
世界選手協会などがIOC宣言に反対

 10月5日のワシントン・ポストは「国際オリンピック委員会(IOC)はセクハラや暴力、ドーピング、差別などに関する“選手の権利と責任宣言”を策定し近く採択予定だが、世界選手協会(WPA)やアムネスティなどの人権団体は、事前協議もなく人権侵害の恐れが強いとして採択延期を要求した」と伝えている。

 この点について10月8日のWPAニュースは、ブレンダン・シュワッブ常務理事の言明として「選手の権利はゲームではない。このIOC宣言は国際的に確認された選手の人権を尊重するものでなく、人権をIOC規約の下に置き、被害者への救済もない。世界では多くの選手が性的被害や児童虐待、人種差別、搾取などで心身ともに不安定な状況にあり、結社や表現の基本的自由を阻害されている。IOCにはオリンピック運動を通じて選手の基本的権利を守る義務があり、かつ手段も持つ」と表明した。

 しかし、採択予定のIOC宣言の内容が公表されていない現段階では問題点が明らかではない。ただ、WPAは昨年12月にも人権宣言を発表して、「各種のスポーツ規約が選手の人権を軽視した不公平なシステムを強要しており、スポーツのガバナンスの改革の必要がある」と訴えていることから、世界のスポーツ界を主導するIOCが宣言採択と言う既成事実を作る前に、人権重視への対処を迫ったものと見られる。
 WPAの活動は「アスリートの団結権、団体交渉権、労働条件の最低基準の保障など、労働者としての基本権の確立を目的としている他、とりわけ世界のアンチ・ドーピング機構(WADA)のドーピングコントロールを巡る選手の権利保障に取り組んでいる」(アスリートの組織化:同志社大学 川井圭司教授)と言われ、シュワッブ常務理事の言明と併せて考えると、IOC宣言案には各種規約やドーピング規定などに人権侵害ないし人権軽視のあることが推測される。
最近の日本のスポーツ界でもパワハラなどの事件が訴えられて、社会的にも大きな問題となっているが、IOCの対応は世界に大きな影響力を持つだけに、注目してゆきたい。

 WPAは、UNIグローバル・ユニオン(900組合2,000万組織)に所属し、世界60カ国に100以上のプロの選手会が加盟、85,000名の組合員を持つが、米国のメジャー野球リーグ選手会、バスケットボール選手会、日本プロ野球選手会、日本プロサッカー選手会、欧州体操選手会なども会員である。またWPAと共同で反対を表明したSRA(スポーツと権利の同盟)には人権団体のアムネスティやヒューマン・ライト・ウオッチに加え国際労連(ITUC)なども加盟するNGOと労働組合による特異な世界的連合体である。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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