バックナンバー

No.514(2018/8/31)
ミズーリ州の住民投票が労働の権利法を否決

 8月8日のワシントン・ポスト紙は、前日のミズーリ州の住民投票で“労働の権利法”の実施が2対1で否決されたことについて、以下の論説(opinion) を載せている。(以下は、論説の要旨)

 1年前、共和党優位のミズーリ州議会の承認を得て、実施直前であった“労働の権利法”が昨日の住民投票で大差で否決された。これは全米に広がった労働組合への攻撃に歯止めをかける数少ない勝利と言えるが、問題は今後同じ動きが続くかどうかである。

 労働の権利法では、民間企業で労働組合に加入しない従業員は、協約の恩恵を受けていても、協約交渉費用である組合費を支払わないでよいとしている。
 法律を“労働の権利法”と呼んだのは政治的にうまい言い方だが、要点は賃金労働条件改善のための交渉費用を分担するかどうかだ。しかし内容の理解には多少時間がかかるため、権利法に多くの支持が傾いた。同法は今まで、米国南部と中西部を中心に27州で成立したが、ミズーリ州がこれを食い止めた。

 ミズーリ州の住民投票に際しては、労働組合による多大な資金と努力が投入されたが、注目されるのは共和党側が投票時期を中間選挙の11月ではなく共和党候補同士の予備選に同調させても、失敗したことだ。共和党は民主党員の動きの低調なこの時期、そして労働組合に充分な活動展開の時間を与えまいとして、なおかつ失敗した。

 労働の権利法について、企業と共和党側は労働組合が弱ければ雇用が集まると主張するが、組合がなければ賃金労働条件を低下させる事が出来、従業員を意のままに動かせるとは言わない。
 労働の権利法の全体的な長所・短所を説明するのは容易でない。雇用や賃金には多くの要素が影響する。明らかなのは、労働組合のない事が雇用創出にいくらかの影響があるとしても、賃金は低下することだ。労働組合員の賃金は、非組合企業よりも明らかに高い。交渉は、一人で要求するより皆が集まる方が高い目標を達成できる。それを労働組合が実現するが、企業は嫌う。単純明快だ。それが分かれば、わたしたちの経済観念は変わる。その点を共和党は懸念する。

 不幸なことに、労働組合攻撃は長期間にわたり成功を続け、労働組合組織率は1980年代の半分、10.7%に減少した。公務員の組織率は高い水準にあるが、保守派判事が多数を占めた米国最高裁は労働の権利法と同様の「賃金労働条件交渉のための非組合員への組合費徴収を違法」とする判決を今年6月に出した。今の26州から全米50州の民間企業に労働の権利法を承認するのが時間の問題と言う状況にある。

 このように言うと、労働組合の運命は定まったかに見えるが、トランプ大統領は少し違う。彼は選挙戦で「過去に製造業で高い賃金労働条件で働いた“忘れられた男女の労働者“を助けたい」と演説した。けれども「この高い賃金労働条件は労働組合によるもの」とは言わない。炭鉱や自動車企業の持主は善意から高い賃金労働条件を出したのではない。労働組合が要求したのだ。

 トランプ政権の雇用創出には力強いものがあるが(これは10年間続いている)、賃金は低いままであり、国民は仕事への自信を失くしつつある。
 こうした時に、ミズーリ州の住民投票は州民からの理解が得られる可能性を示した。格差を拡大し、企業と富裕層に大幅減税を実施して、労働者の権利を侵害する政党に対し、反動の可能性を心配する事態が少しは起きるかもしれない。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.