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No.513(2018/8/24)
トランプ大統領が“職業訓練強化の行政命令”

 7月19日のニューヨーク・タイムス紙は、以下のように報じている。

 「600万名に及ぶ熟練労働者不足対策として、トランプ大統領は見習工制度の拡大と低学歴労働者への職業再訓練に焦点を当てた連邦協議会の設立、及び政策一元化の行政命令に署名した。その“アメリカ労働者協議会(Council for American Workers)”は商務長官と労働長官を含む産業界代表と労働組合代表により構成されるが、今後5年間の連邦政策の一元化と新たな必要資金を検討する。政治的対立が多い米国でも、職業訓練の必要性には異論がない」。

 この“忘れられたアメリカ人労働者”の問題はトランプ大統領の公約に載せられているが、今年の中間選挙でも大きな課題である。行政命令の署名式に参列し、共同署名した各界代表の中で、ウオールマート代表は100万名の職業訓練を、建築労組は50万名の職業訓練計画を発表しているが、数字には新たな見習工育成だけでなく、企業内訓練や現行訓練制度、企業間移転可能の資格制度も含まれる。」

 トランプ政権の政策は白人層を中心とする既存体制の保護、そして失われた権益の回復に焦点を当てているが、その中には米国産業保護の名のもとに打ち出された石炭政策、最近では鉄鋼関税の引き上げ、また自動車関税も槍玉にあがっている。更に中国製品への輸入関税引き上げから起きた中国の対抗関税により被害をこうむった農業には補助金を支出するなど、被害を受けたとされる特定産業ないし労働者に直截的な対策を打っている。こうした政策展開は対象となる産業や労働者に大きな救いと映ることで、トランプ大統領への強固な支持基盤を形成する。

 今回の職業訓練強化の行政命令は是非必要な政策であり、上記政策と同列に置くことは出来ないが、対象となる特定層、特に“忘れられたアメリカ人”には救いとなる。

 米国の多くの大統領が国内問題を睨みながらも国民全体、国際情勢を考えながら政策を展開してきた。しかしトランプ政策は地球温暖化問題を否定して石炭保護を打ち出すなど、大局観を無視した一部選挙民向けの様相が強い。資本主義社会の矛盾が各所で噴出している現在、こうしたトランプ政策が継続されるとしたら、米国や世界における亀裂・分断がどこまで深まるのであろうか。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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