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No.510(2018/7/23)
就職には労働組合加入が条件、デラウエア州

 6月21日のワシントン・ポストは「デラウエア州(東部地域)の民主党多数の下院議会が25対13で、民間企業への就職に労働組合加入を義務づける法案を承認した。民主党議席が多数の上院もこれを既に承認、カーニー知事(民主党)の署名を待つだけである」と報じた。この議会承認は度々の共和党勢力からの“労働の権利法” 制定の動きを再度封じたことになるが、それでも労働の権利法を排除する州は22州に減少している。

 2017年の選挙で、地滑り的勝利をおさめた共和党は25州で知事、議会ともに共和党優位を築いたが、民主党が知事と議会多数を占めるのは6州に過ぎず、その他の19州では知事と議会の勢力が共和と民主に分かれている。

 こうした中、共和党議会優位の28州では“労働の権利法”が次々と成立して、労働組合の存続を危うくしている。ウイスコンシン州(中西部地域)の例では公務員の団体交渉権が制限されたこともあって「組合員が40%も減少した」(労働省統計)。
 “労働の権利法”と言うのは、労働組合加入と組合費の支払いを従業員の自由意志とするもので、労働組合との労使交渉により賃金労働条件が決定されたとしても、従業員は組合費を支払わなくてもよいため、組合加入者は減少し、労働組合の消滅につながることが懸念される。労働組合による高い労働コストを嫌い、自由な投資環境を求める各企業を誘致するために共和党議会が積極的に導入を図っている。

米国の公務労働運動に壊滅的打撃、最高裁の判決

 6月27日のワシントン・ポストの論説(opinion)は、「本日、米国最高裁は公務員労組が非組合員から団体交渉に伴う費用を徴収するのは憲法違反だと判決した。これは共和党にとって大勝利となる」と述べている。

 保守派が5対4で優勢の最高裁は40年来の先例を破って、「かかる料金を徴収する事は言論の自由を侵害し、組合加入反対者に金銭的支援を強制する事になる」と結論したが、これは労働運動の中核、そして民主党の支援団体である公務員労組への壊滅的打撃となる。民間労働組合の組織率を6.5%に減少させた現状に続き、公務員労組の組織率34.4%を低下させる引き金となる。

 ここで重要なのは、問題は労働組合の政治活動ではなく、賃金・労働条件改善への実現コストを負担しなくてもよいとした点で、保守派判事が労働組合の消滅を目指している事である。
 1950−1960年代は、多くの白人労働者は高校を卒業して、労働組合の交渉によりが実現した賃金・労働条件(最低賃金保障と週40時間など)にて会社・工場に就職したものだが、当時は労働者の3分の1が労働組合員であった。

 しかしその後、労働組合員数は幾つかの理由で減少を続けたが、中でも富裕層の共和党員達による労働組合潰しのための州法改定が大きく影響した。そして今回の最高裁決定である。反労組のコック兄弟(米国第2の民間企業で化学、石油パイプほか多業種にわたり、10兆円の資産を有する))は、多額の政治献金を続けながら労働組合の弱体化を目指し、ウイスコンシン州ではスコット・ウオーカー知事(共和党)への支援により公務員の団体交渉権を制限させたことになる。

 保守勢力が嫌うのは労働組合が従業員と雇用主との関係を個人的な契約とするのではなく、階級の差による構造問題として扱うことだ。個人的問題は時として政治に繋がる。共和党大統領が就業規則や労働に関する安全を規制緩和しようとするときに、労働組合が障害となると思われている。

 今の最高裁の体制が続く限り、労働運動には更に厳しい状況が待っている。それを覆すには選挙における民主党の勝利と裁判所交代(任期満了)しかないが、それには数年を要するであろう。

 現況の共和党優位の政治を実現させた原因が何であったのか。
 労働組合について言えば、前回選挙の敗因についての言及や対策がなされていないことである。労働運動が組合員の利益保護に終始して、一般労働者を顧みないとの批判もある中で、一部労組の贈収賄汚職スキャンダル対応も不十分であるといわれている。
 そういった米国労働運動の再生のためには、労使対決姿勢を転換し、身近にある労使対話
を重視する姿勢がどうしても必要だと考える。

 米国社会には、巨大化する経済所得格差、移民問題を巡る人種間の対立、移民労働者の窮乏、最低賃金($15/時)要求、経済格差デモ(占拠運動)、環境破壊、人種問題やマイノリティ問題、セクハラ・性的暴力の告発(MeToo) など、社会問題が拡大している。、最近各州で連鎖した教員ストでは、仲間の連帯醸成に労働組合を飛び越え、SNSで個人々人が繋がるという状況も出た。

 最高裁の反組合判決に加えて様々な課題を抱える米国労働運動は、批判と反対の終始にとどまっている。労働組合とは聞かれたある子ども(南部の州)は「怖いおじさんたち」と返答するなど、社会的な期待に十分に応えていない。

 現在、全米自動車労組(UAW)のフォルクスワーゲン社の組織化にあたって、労働協議会制度の機会を提供しているが、米国労組に積極的な反応がないと指摘されている。
 ストライキを主眼とする従来の労使対決の姿勢から、パートナーである使用者と対話を基本とする労使協議を重ねて、直面する労使共通の課題の解決が期待される。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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