バックナンバー

No.508(2018/7/13)
アルゼンチン労組、IMF融資に伴う構造調整政策に反対するゼネストに突入
~労働法制の改革などが今後の焦点に~
JILAFメールマガジン506号関連記事
アルゼンチンCGTの行動

 6月25日、アルゼンチンで労組の最大組織であるアルゼンチン労働総同盟(CGT・ITUC加盟)が主導するゼネストが行われた。政府が国際通貨基金(IMF)の融資導入に伴い財政削減と規制緩和を表明したことに抗議し、政策転換を求めるものである。25日には首都ブエノスアイレスだけでなく、ほぼ全土での公共交通や銀行が機能を停止し、学校の多くも休業、さらには輸出の主力品である穀物の積出しも止まった。

 アルゼンチンでのゼネストは、2015年11月に中道右派系のマウリシオ・マクリ氏が大統領に就任して以来、3回目のものである。2015年の大統領選挙では、それまでの与党で労働団体の支持する「正義党」が分裂、マクリ氏は初回投票では二位であったが、決選投票で「正義党」のダニエル候補を破り当選した。マクリ政権の政策に対して、CGTなどの労働団体は、政府助成金の削減による電気・ガス料金の高騰、公務員のリストラなどが労働者の生活を脅かすとして対決姿勢を強めている。2017年の4月と12月には年金制度の改革などをめぐるゼネストが行われた。

 一方、マクリ氏は、労働団体が支持する正義党の政治を「ポピュリズム」と批判する。そのため、前政権の政策を大きく転換し、輸出入規制と補助金の廃止をすすめ、グローバルな経済への参加を強める路線を打ち出した。その政策は、海外からの進出企業や投資家などからは概ね好意的に受け止められ、日系企業でもトヨタが追加投資を打ち出した。2016年には2001年の国家の財政破綻(デフォルト)に伴う債務問題を解消し15年ぶりにドル建ての国債を発行、国際金融市場に復帰した。

 マクリ政権は、労働分野の制度改革にも乗り出している。昨年秋には政府案の骨子が公表されたが、労働保護の柔軟化を軸とするものであった。そのポイントが解雇補償金の実質的な切り下げや下請け労働者に対する元請けの責任軽減などを含んでいたことから、労働団体は激しく反発した。昨年11月には、CGTなどの労働組合が、労働保護の柔軟化撤廃を求めて全国的な運動を展開し、政府との協議を求めた。労働雇用大臣との協議は一週間に及び、政権側の一定の譲歩により当面の合意が行われた。これを受けて、11月に、労働法制の改革法案が国会に提出された。政府は当初、今春に審議を予定していたが、労働団体や野党の強い反対を受けて先送りされており、論議の再開は秋以降となる見込みである。

 なお、アルゼンチン経済は、既報(JILAFメールマガジン506号)のとおり、米国金利上昇の直撃を受け、通貨のペソ(ARS)が急落、中央銀行が政策金利を40%に引き上げるなど危機的な状況にある。そのため、政府は国際通貨基金(IMF)からの融資受け入れに踏み切ったが、国民にはかつての財政破綻(デフォルト)の経験もあり不安がひろがっている。いずれにしても、アルゼンチンでは、経済危機が進行するなかで、労働法制の規制緩和が論議されようとしており、政労使の対話も正念場を迎えているといえる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.