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No.504(2018/6/27)
北アメリカ・南アメリカの労働事情

【ブラジル全土にトラック運転手の大規模ストライキ、そして石油スト】

 ブラジル日本商工会議所ニュースは、ブラジルの燃料価格を巡る運転手ストについて、5月23日付エスタード紙の報道として、「5月21日ブラジルの自営業運転手協会(CNTA)が昨年比50%以上のディーゼル燃料価格の高騰に抗議して、全国各地でストライキに入り、ハイウエーも閉鎖した。そのため各地で食料品が不足、GM、日産など自動車各社では部品不足で生産休止、郵便配達も停滞、学校の休校、航空機も燃料不足による欠航、主要港湾は開店休業状態に陥るなど、経済活動が全国的に麻痺している。」と報道した。

 そしてワシントン・ポストは「政府は幾つかの運転手組合とスト中止で合意し、その後も続くストと道路封鎖についてテメル大統領は“ラディカルな少数の運転手による違法スト”として、軍隊による実力排除を命令した。しかし道路封鎖は解かれてもストライキが終わるかどうか、解決の見通しは立っていない」(5月28日付)と伝えている。
 テメル大統領(民主連動党)は、2016年のルセフ前大統領(労働者党)への弾劾で副大統領から昇格し、財政確立と投資環境の改善を重要課題に取り組んでいる。
 しかし、テメル政権は発足6カ月で建設、石油、食肉など各種産業に関わる贈収賄事件で6人の閣僚が辞任、自身も収賄罪で起訴されるなどして支持率はわずか3 %、不支持は92%を記録、今年10月の大統領選挙を控えて政治基盤は極めて脆弱であり、どこまで強力な対策が打ち出されるか不透明である。

 また、ブラジルは石油生産国であり、近年の発見で世界1の埋蔵量が確認されているが、開発は進まずに未だ不足分を輸入に頼っている。最近の国際原油価格の高騰は財政に負担となってはいるが、政府はガソリン価格を管理して安く誘導してきた。そうした資源を持つだけに石油には国民の強い期待と要求がある。今回の事態は、政府の対応の遅れと無策に度々の抗議を繰り返したトラック運転手の大きな不満と怒りが爆発した結果と言えよう。

【トランプ大統領が公務員労組活動制限の大統領令】

 5月25日、「トランプ大統領は無能公務員の解雇、公務員労組活動の制限などを図る大統領令に署名、発令した。」(5月25日付ワシントン・ポスト)

 大統領令の内容は各省庁に対し、協約内容改善のために公務員労働組合との協議を要請しつつ、筆者が要約すれば、
  1. 無駄な経費を省くため労使交渉は1年以内にとどめる。
  2. 勤務時間中の労働組合業務は25%以内に制限するよう再交渉する。
  3. 政府施設の使用について労働組合に使用料を請求し、年間$1億の節減を図る。
  4. 無能及び不行跡な公務員の解雇を円滑にするための手続き短縮を図る、としている。

 これに対して公務員最大の700,000名組織、アメリカ政府従業員連合会労組(AFGE)は直ちに声明を発表し「この大統領令は200万人公務員に対して米国議会が付与した法的権利と保障に対する直接攻撃だ。組合潰しの域を過ぎて、民主主義潰しの行為である。日常の問題解決に努力する公務員を無視し、公共の利益を損ない、非効率性を産むものだ」(5月25日同労組ウェブサイト)として強く批判した。
 更に5月31日付ワシントン・ポストは「AFGEが『大統領令は憲法違反だ」として訴訟したと報じており、観測では法廷闘争の構えが強まっている。

 以上は公務員に関する問題だが、ここで民間労組を含む労働問題について付記したい。
米国の労働運動は流血の闘争を経験してきた。交渉を勝ち取るためにはストライキの実力行使しかないという対立の労使観念が支配的である。使用者は政府機関を含めて労働組合を力で抑え込む。異なる人種構成があり、教育も日本のように均質ではない中で、労使の相互理解には多くの障害がある。硬直的な使用者と労働組合の関係に相互理解と友好関係を育むためには、「日常の対話」が不可欠である。

 糸口になると思われるのがフォルクスワーゲン労組による「労使協議会制度」導入の試みだが、米国の労働法は協議会を持つには労働組合の結成が前提になければならないとし、使用者はその労組結成を嫌う。労働運動の政治要求には協議会制度の文字はない。
 労使がいがみ合っていては健全な産業平和は期待できない。カンバン方式を米国に定着させた日本が、フォルクスワーゲンと共に、「日常の対話」制度化の重要性を何とか米国労使に伝える事は出来ないものであろうか。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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