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No.503(2018/6/25)
北アメリカの労働事情

【契約労働者の団結権を否定、最高裁判決】

 「米国最高裁は審議中の或る契約労働者の訴訟について、『賃金・労働条件を巡る争議について労働者の団結権を禁止し、従業員個人との仲裁裁定に委ねる事が出来る』と判決した。

 但し判決は集団行動を禁止する契約条項に署名した契約労働者に適用されるもので、労働組合員には適用されない。問題は法律解釈にあるが、1935年の米国ニューディール政策以降の法律が団結権を擁護するのに対し、それ以前の連邦仲裁裁定法は裁定を奨励する。」と、5月21日付ワシントン・ポストは報じた。

 共和党指名判事が民主党判事を上回5−4の多数を占めた現在の最高裁で、鍵を握ったのは新任のゴーサッチ判事だが、多数派は個人契約の労働者について80年以上前の仲裁裁定法重視の見解に立ったわけである。

 集団訴訟に比べて裁定を不満として個人が訴訟を起こす場合には力の差、経済負担の差などで使用者が圧倒的な優位にたつ裁定法の下では、使用者が圧倒的に優位に立つ。集団訴訟を否定された人種問題など個人の問題がこれからどう扱われるか?この他、最高裁の審議事項には「労働協約の恩恵を受ける非組合員公務員からの組合費徴収問題」が控えており、共和党支持者に有利な判決がまかり通る懸念が増している。

【カナダ労働会議(CLC)からのUNIFOR の脱退について】

 「去る1月、カナダ最大の民間労組のUNIFOR(31万人)がナショナル・センターであるカナダ労働会議(CLC 330万人)から脱退した。

 脱退については各労働組合からは批判が相次いでおり、『トランプ政権の誕生など過酷な状況に曝されている労働運動に内部分裂騒ぎがあってはならない』と訴えている。
 批判する組合は全国公務員一般従業員組合(NUPGE)、カナダ公務員組合(CUPE)、全米鉄鋼労組(USW)、国際機械工労組(IAM)、全米食品商業労組(UFCW)、縫製・繊維・ホテル・レストラン労組(UNITE/HERE)、国際サービス労組(SEIU)、全米配管工労組(UA)など多数に上る。」(3月17日付RANKANDFILE紙)

 UNIFORはかつて全米自動車労組(UAW)を脱退したカナダ自動車労組(CAW)と通信・エネルギー・紙労組(CEP)が2013年に合併して生まれものたが、今回のCLC脱退の理由として“米国支配からのカナダ労組の独立”を訴えており、その動きの一環としてRANKANDFILE紙は「UNIFORがUNITE/HEREのカナダローカル、ATU(合同運輸労組)ローカルの脱退を支援している」とも報じている。
 CLC脱退の際のUNIFOR声明文(以下、1月18日付、ウェブサイトから引用))の主要点は次のとおりである。

  1. CLC憲章は「民主的権利、自主的権利を守るための労働組合変更の承認を明記」しているが、CLCは対応を怠り、米国支配の労組からカナダ組合員を守っていない。
  2. こうした扱いを受けたATUローカルがCLC憲章の労働組合変更の手続きに則って助けを求めたが、回答がない。逆にCLCの傘下組合は本件の調査を妨害し、信託委任の権利を持ちだして、組合員を沈黙させる行動に出た。
  3. 信託委任の下では事務所は接収され、民主的に選ばれた役員は解任、職員は解雇、組合員基金は没収される。
  4. CLCが組合員を守ることが出来ない間、UNIFORは多くの組合と軋轢を起こすことになった。米国の暴漢ども(bullies)によるこうした事態を黙視する事は出来ない。カナダにはより強い労働運動が必要だと考え、1年前から執行委員会で徹底論議を尽くし、全会一致で脱退を決議した。
  5. UNIFOR はカナダの労働組合員および一般労働者の権利と経済利益を増進するために誕生した。今回の脱退によって、カナダ労働者の民主的権利が尊重されるよう、変革の起きる事を願う。
  6. UNIFORは労働運動を分裂させるのではない。各州における労働評議会、コミュニティ活動、草の根組織との協力を強く推し進め、組合以外の一般労働者をも代弁する新たな労働運動を築いてゆく。
  7. 組合員への情報提供を密にしながら事態を正確に伝えてゆくが、役員、職場委員、活動家が一体となった活動を要望する。

 前傾、2)にある「信託委任(Trusteeship)」とは、ローカル・ユニオンに規約違反、汚職、統制違反、不正行為、統治不能などがあるとき、労組会長は定められた手続きを経て、信託人を一定期間選任し、信託人は規約にしたがって役員の刷新、資産の管理などの権限を行使してローカル労組の運営を正常に戻す。幾つかの米国労組にその組合規約が見られる。

 また、CAWがUAWから脱退したのは1985年、当時は日本からの輸出攻勢の中でUAWは労使交渉に可なりの譲歩を余儀なくされ、カナダから米国への工場移転も話し合われる中、大会代議員にカナダ代表が少ない事も手伝って、カナダ側が不満を持った。脱退を主導したのはボブ・ホワイト氏、国際労働機関(ILO)の理事活動を通じて自動車総連の塩路元会長とも親交があった人で、初代CAW会長として基盤を築いた。経済的には米国に依存するカナダだが、筆者の友人のカナダ人にも「アメリカ人とは違う」と言う幾人かがいる。統制違反の名の下に信託委任という米国支配に置かれるカナダのローカル労組に自国意識の強いCAW関係者が危機感を強めた感がある。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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