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No.500(2018/5/25)
米国大学院生の労働組合結成、第3者機関への調停依頼増加

 4月2日のワシントン・ポスト紙は、「230年の伝統を持つ米国有数のジョージタウン大学(ワシントンDC)が助手や講師として働く大学院生の労働組合結成について、全国労働関係委員会(NLRB)の承認に頼らず、自主的に投票を承認する事にした」と伝え、また「大学が“助手、講師の仕事は教育の一環であり、従業員ではない”との従来の主張を変えて、学生の労働組合結成への希望を尊重して協約交渉も行う、と言明した」と報じている。

 米国私立大学における助手や講師の大学院生の労働組合結成については2016年、NLRBがその権利を認め、多くの大学で労組結成の申請が出されたが、当時は民主党指名判事が多数を占めた中での判決であり、共和党指名判事多数となった現状では承認の可能性が低下しており、NLRBを避ける動きが出ている。

 前述の報道も学生の意向を尊重する方向に態度を変えた大学が自主投票を認め、かつ投票管理をNLRBでなく第3者の仲裁機関に依頼する事にした内容だが、共和党指名判事優位に変化したNLRB体制の中で、労働調停にも明らかな変化が起きている。
 大学院生の労働組合結成が伝えられる有名大学にはニューヨーク大学、コーネル大学、ボストン大学、シカゴ大学、エール大学、ハーバード大学、コロンビア大学などがあるが、第3者機関に依頼するところも増えている。第3者機関による調停では労使の合意が前提となり、忍耐と時間を要するものの、訴訟に伴う高額の費用を避ける事が出来るという。

全米各地で起き始めた教員のストライキ

 4月4日とその後のニューヨーク・タイムス紙は「去る3月にウエスト・バージニア州の教員が50州中47位と言う低賃金に抗議して9日間のストライキを起こし、結果として全公務員対象に5%の賃上げを獲得した。これを受けてオクラホマ州の50学校区では賃金凍結への抗議、ケンタッキー州では年金改悪への抗議、アリゾナ州では20%賃上げ要求のストライキへの財源に消費税立法、最近ではノース・カロライナ州にもストの動きが出ている。
 これは共和党優位の議会が多年にわたり減税と予算削減を続けた結果だが、ウエスト・バージニア州の成功に触発されて、強い手段が必要との認識が広まった。今回の特徴は一般教師たちがフェイスブックで結びつき、労組指導者よりも早く、しかも攻撃的に州議会に要求を突き付けたことだ」と報道している。

 米国では共和党優位の各州で労組加入が個人の自由意志とされ、また多くの州で教師のストライキが禁止され、労働協約の有るところではスト権放棄が謳われているが、それでも病気などを口実にした休暇は止むを得ないものとされる。
また教職員の大多数を女性が占めている事も共感を大きく広げる場を作っていると思われる。大多数の州の教職員組合の委員長は女性が占めており、お互いの会話にSNSを駆使する。米国の2大教員組合を率いる指導者も女性であり、NEA(全国教育協会労組)はリリー・ガルシア会長、AFT(アメリカ教員協会労組)はランディ・ワインがーテン会長が率いている。しかし1960年―1970年代における男性のアルバート・シャンカーAFT会長が投獄された時のような戦闘的なレトリックはない。

 ここで注目されねばならないのは、労組加入が教師の自由意志となっている共和党優位の各州で、なぜこれほど組織的かつ大規模のストライキが起きているかの理由である。
 長年積り積った我慢に限界が来た反発、教員組合には加入していない多数の教師を巻き込む集団行動、労働組合の組織的な指示がない中でフェイスブックで結びついた草の根活動、違法ストの恐怖にも敢えて挑戦する強い意志、そして労使協議の重要性を軽視、無視したツケ、こうした要因の何れもがこれからの労働運動に何らかの変化をもたらす可能性を示唆しているように思える。労働組合を抑圧すれば、従業員個人の不満も抑えられる、というものではない。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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