インドネシアの基本情報

面積 190.5万平方キロ(日本の5.04倍)(The World Fact Book(WFB))
人口 2億6399万人(2017、国連推計)
首都 ジャカルタ1,047万人(2016年インドネシア政府統計)
主要都市 スラバヤ285.3万人、バンドン254.3万人、メダン220.4万人(2015年推定、世界年鑑)
主要言語 インドネシア語 他に約700のローカル言語あり
民族 マレー系約300民族、他に中国系
宗教 イスラム教87.2%、キリスト教9.9%、ヒンズー教1.7%ほか(2010年、WFB)
GDP 1兆142億米ドル(2017年、ジェトロ) ※産業別分布は本文第5項参照
一人当りGDP 3,877ドル(2017年、ジェトロ)
労働力人口 1億2,814万人(2017年、ILO) ※産業別分布は本文第5項参照
産業別分布(%) 製造業22%、卸売・小売・ホテル・飲食業16%、農林水産業13% (2015年、GDP比(公財)国際金融情報センター)
IL0中核8条約要 批准総数20、中核8条約:批准数8(すべて批准) (ILO・2018年6月)
通貨 100ルピア=0.789円、1米ドル=13,771ルピア(2018年前半平均、IMF)
政治体制 共和制
国家元首 ジョコ・ウィドド大統領(2014年10月就任・任期5年)
議会 国民協議会(立法府)
行政府 大統領が実権、首相なし、33省
主な産業 製造業、農林水産業、商業、建設業、運輸通信
対日貿易 輸出2兆2307億円  輸入1兆5022億円(2017年、財務省統計)
日本の投資 3817億円(2017年、財務省統計)
日系企業数 1,911社(2017、外務省統計)
在留邦人数 19,717人(2017年、外務省統計)
気候 熱帯、乾季4~10月、雨季11~3月
日本との時差 0~-2時間
社会労働情勢概要 ・市民派のジョコ・ウィドド大統領に高い支持率が続いたが、2017年以降、イスラム保守派の動きが強まっている。2019年に次回の大統領選挙を迎える。
・経済は、リーマンショックの影響を受けた2009年を除き,ほぼ5%後半~6%台という
比較的高い成長率を継続。2017年には一人当たり名目GDPが約3,800ドルとなり中進国のレベルである。輸出が資源産業に偏っており、質の高い経済構造実現が課題。
・自動車、電機・電子産業などの輸出加工基地であり、日本から1500社超の企業が進出。
・工業地帯などでの労使紛争(アウトソーシングや契約雇用に係る紛争)が続いており、 
建設的な労使関係の推進や労使紛争の適切な解決が課題。
・労働組合はナショナルセンターが4、他の全国組織が約90と分散状態。
主な中央労働団体 インドネシア労働組合総連合(KSPI)
全インドネシア労働組合総連合(KSPSI)
インドネシア福祉労働組合総連合(KSBSI)
労働行政 インドネシア労働移住省 (Ministry of Manpower of the Republic of Indonesia)
中央使用者団体 インドネシア使用者協会(APINDO:Asociasi Pengusaha Indonesia(インドネシア語)/英文名:The Employers' Association of Indonesia)
最終更新日 2018年 9月 30日
主要統計
(GDP)
201220132014201520162017
GDP成長率 6.25.85.04.85.05.1
一人当りGDP(ドル) 3,5833,6703,5313,3733,6053,877
物価上昇率 (%) 4.38.48.43.43.03.6
失業率 (%) 6.16.25.96.26.25.5

1.政治と社会の動向(1945年以降)

事項
1945年 日本軍の占領終了。スカルノ独立宣言。オランダとの独立戦争(~1949年)
1950年 スカルノ、新憲法施行。インドネシア共和国、完全独立。
1955年 バンドンの「アジア・アフリカ会議」を主導。
1965年 「9.30事件」(軍部共産系のクーデター未遂)。スハルト陸軍大臣により共産党壊滅。
1967年 スカルノ、スハルトに実権移譲(大統領代行)。
1968年 スハルト、第二代大統領就任。外交は親米・反共、経済は「開発独裁」
1975年 ポルトガル領東チモールで独立宣言。インドネシア軍が侵攻、1976年に併合宣言。
1998年 アジア通貨危機受け、民主化運動激化。スハルト氏辞任、ハビビ大統領。
1998年 ハビビ大統領、東ティモール独立容認。2002年、東チモール独立。
1999年 総選挙、闘争民主党第一党
1999年 ワヒド大統領、民主化改革はじまる。ILO中核条約をすべて批准(~2000年)
2001年 国会、不祥事などでワヒド大統領解任。メガワティ副大統領昇格
2004年 初の国民による直接選挙でユドヨノ大統領選出
2005年〜 経済成長拡大 2009年、ユドヨノ大統領
2014年 総選挙で闘争民主党が第一党に。大統領選で同党のジョコ・ウィドド氏が就任。
2017年 ジャカルタ州知事選で現職敗北、イスラム保守派が当選。
2019年 大統領選挙

2.国家統治機構

元首

  • 大統領:ジョコ・ウィドド。直接選挙制で任期5年、三選は禁止。

議会

  • 国民議会(立法機関:定数560、直接選挙で選出、任期5年)。与野党の議席はつぎの通り(2017年10月現在)。
    (与党)
    闘争民主党109、民族覚醒党47、開発統一党39、ナスデム党36、ハヌラ党16
    (野党)
    ゴルカル党91、グリンドラ党73、民主主義党61、国民信託党48、福祉正義党40
     
  • 地方代表議会(定数132、各州から4人ずつ総選挙に合わせて選出)
    立法権は持たないが国会に法案を提出できる
  • 国民協議会(国民議会と地方代表議会の合同会議。憲法改正や正副大統領の罷免などを決議する機能を持つ)

行政

  • 大統領が閣僚を任命。首相なし。内務省ほか32の省がある。労働行政は「労働移住省」が担当。

司法

 三審制であり、地裁、高裁、最高裁がある。裁判所の種類として、憲法、普通、宗教、軍事、行政、汚職のほか、労使参加による労働裁判がある。2003年には違憲立法審査や国会での大統領解任提案の正当性などを判断する憲法裁判所を設置。

3.政治体制

政体

  • 大統領が最高権力を持ち、三権分立による共和制。

主な政党

闘争民主党

スカルノの国民党の流れを引き継ぐ民主党がスハルトによる介入を受けて分裂、メガワティ支持派が党名を変更して設立。パンチャシラを掲げる中道左派。ウィドド現大統領が所属。

グリンドラ党 2008年、スハルトの娘婿であったプラボウォ・スビアント元陸軍戦略予備司令官を大統領候補とすることをねらいに設立。党名は“Gerakan Indonesia Raya”(「大インドネシア運動党」)の略。
ゴルカル党 1964年に軍が結成したスハルト時代の与党を引き継ぐ。全国的な党機構と支持層をもち、地方での支持者が多い。党名は“Golongan Karya”(「職能集団」)の意味。
民主主義党

2001年に、民主化のなかで、既成政党に不満を持つ国民の支持の結集をねらいに知識人が結成した新党。ユドヨノ前大統領が党首。政治姿勢は穏健なイスラムを掲げる。

4.人口動態

  • 現在の人口は約2億6千万人強であるが、国連の予測によれば、2030年代はじめに3億人を突破し、2070年頃に3億5千万人台でピークを迎える。
  • 25歳未満の若い人口が42%と多く、人口増が労働力増に結び付く「人口ボーナス期」が今後20年程度は続くと見込まれている(2017年)。

5.産業構造と就業構造

主要産業

  • GDPの産業別比率は、製造業20.2%、農林水産業13.1%、商業・ホテル・飲食業13.0%、鉱業7.6%、建設10.4%、運輸・通信9.2%、金融・保険4.2%、行政サービス・軍事・社会保障3.7%など(2017年・インドネシア政府統計)

労働力人口

  • 労働力人口は約1億2,800万人。産業別の比率では、サービス産業47%、農業等32%、製造業等21%(2016年、WFB)。

6.経済状況

経済情勢

  • 「インドネシア経済開発加速・拡大マスタープラン」(2011-2025年)では、2025年までに、一人当たりGDPを14,250米ドルとし、世界の先進国の一員となる目標を掲げている。
  • 経済成長率は、2010年代では、ほぼ5~6%台を維持するが、最近はウィドド政権の目標に届かず、経済活性化が課題となっている。
  • また、経済構造は資源輸出への依存度が高く脆弱な面がある。経済の質的な向上のため、インフラ整備、産業の高度化・高付加価値化による輸出競争力の向上を進める必要がある。

所得の動向等

  • 一人当り名目GDPは、2017年には3,877米ドルであり、中進国に近いレベルである。

7.労働組合の組織

ナショナルセンター

  • 主要なナショナルセンター(総連合:インドネシア語Confederasi)としては、ITUC加盟のインドネシア労働組合総連合(CITU/KSPI)、インドネシア福祉労働組合総連合(KSBSI)のほか、インドネシア労働組合連盟(KSPSI)がある。KSPSIは、事実上二つに分裂している。CITU、KSBSIとKSPSIの一つの分派による政策上の協力組織としてインドネシア労働者評議会(MPBI)がある。このほか、約90の全国的組織(連合:Federasi)がある。
  • なお、中央労働団体の略称は国際的にもインドネシア語によるものが通用しており、英文が併記されることがある。主要三団体についてはつぎのとおり。インドネシア労働組合総連合(KSPI:Konfederashi Serikat Pekerja Indonesia /CITU:Confederation of Indonesian Trade Unions)。全インドネシア労働組合総連合(KSPSI: Konfederasi Serikat Pekerja Seluruh 
    Indonesia/Confederation of the All Indonesian Workers Union)。インドネシア福祉労働組合総連合(KSBSI: Konfederasi Serikat Buruh Sejahtera Indonesia(KSBSI)/Confederation of Indonesia Prosperity Trade Unions)
    (※)詳細は国際労働財団HPの「ナショナルセンター情報」参照。

産業別の状況

  • 金属・電子・自動車、繊維、化学・薬品・石油、印刷・メディア、銀行、観光などを幅広く組織化。

8.支援組織、国際産業別労組(GUFs)の活動

現地協力・支援活動実施

  • 日本JILAF、ドイツFES、米国ACILS、オーストラリアAPHEDA、フィンランドSASK、スウェーデンLO-TCO、ベルギーWSM、オランダFNV。ほか、GUFsなど。

現地事務所設置

  • 上記のうち、FES、ACILS、WSMは現地事務所設置。FNVは現地提携組織あり。

9.労使紛争の状況

  • ストライキ件数は、2013年から最低賃金の引き上げを求める動きが活発化し、発生件数は年間200件を超えていたが、2015年最低賃金の制度改正により、2015 年(10月までの暫定値)の件数は減少している。
  • 最近の紛争の発生状況は次の通り。

ストライキ発生状況

  2010 2011 2012 2013 2014 2015
件数 82 196 51 239 233 10
参加者数 1,982 54,861 13,753 32,209 16,104 3,960
労働損失時間 10,571 233,718 28,863 131,006 148,548 37,338

資料:インドネシア労働移住省

10.最低賃金制度と労働・社会保障法制

最低賃金

 最低賃金は政府がインフレ率と経済成長率を示し、これを基に各州の賃金評議会において、最低賃金額の勧告を行い、最終的には各州の知事が毎年の最低賃金額を決定する。州によっては県・市における設定がされることもある。また、州あるいは県・市産業別最低賃金を設定することが可能であるが、産業別最低賃金は一般の最低賃金を上回らなければならない。
 労働大臣は、5年毎に、政労使三者構成の全国賃金評議会の審議を経て、最低賃金の設定基準である「適正生活水準: KHL」の算定方法を定め、これに基づいて各州(又は県・市)でKHL を定める。
 地域別最低賃金は、従来は州・県などでの論議が紛糾して労働紛争が生ずることもあり、引上げ率には地域間で大きな開きがみられたが、2016年に現行制度が導入されて以降は、政府の基準値に沿うところが多くなっている。2018年は政府が示した基準値8.71%(インフレ率3.72%+成長率4.99%)の引上げ率とした地域が多い。

地域別最低賃金の推移 (賃金額はルピア、引上率は%)

地 域 2015 2016 引上率 2017 引上率 2018 引上率
ジャカルタ特別州 2,700,000 3,100,000 14.8 3,355,750 8.25 3,648,035 8.71
ブカシ県
(西ジャワ州)
2,925,000 3,261,375 11.5 3,530,438 8.25 3,837,940 8.71
カラワン県
(西ジャワ州)
2,987,000 3,330,505 11.5 3,605,272 8.25 3,919,291 8.71
スラバヤ市
(東ジャワ州)
2,710,000 3,045,000 12.3 3,296,213 8.25 3,583,312 8.71

産業別最低賃金の推移

 首都ジャカルタ州での2018年の産業別最低賃金は11分野の80業種で設定された。このうち4分野23業種では地域別最低賃金の引き上げ率8.71%を上回った。「化学・エネルギー・鉱業」11.9%、「製薬・病院」10.82%、「繊維・医療・皮革」9.76%、「自動車」9.0%である。

主な労働・社会保障法制

  • 主な労働・社会保障法制はつぎのとおり
    「労働組合法」(2000年)、「労使紛争解決法」(2004)、「労働法」(2003年)(※)
    「社会保障団体に関する法律」(2011)、「年金基金に関する法律」(1992年)
    (※)印の法律については国際労働財団のアジア労働法データベースに日本語訳が掲載されている。

11.日本のODA方針(外務省・「国別開発協力方針」(2017年9月)より)

  • 基本方針:インドネシアの均衡ある発展を実現するため、質の高いインフラ整備等による国際競争力の向上、安全で公正な社会の実現などに向けて支援を行う。
    重点方針:①質の高い交通・物流・エネルギー・通信網等やビジネス・投資環境の整備と人材育成の支援、②地方の開発支援など生活の質と防災などの行政機能の向上支援、③気候変動と環境保全対策への支援、感染症への対応能力、援助国(ドナー)としての能力向上支援等

12.JILAFの事業

  • 招へい事業:1991年からこれまでに92人(男性63人、女性29人)の労働組合リーダーを招へい(2017年度末現在)
  • 現地支援事業:1994年にセミナー等の事業を開始し2017年まで毎年実施。テーマは「労組基礎」「組織強化」「リーダーシップ」「組織化」「団体交渉」「労働協約」「紛争処理」「労使紛争解決」「最低賃金」「国際化」「社会保障」「共済制度」(1994年~)、「職場環境改善」(2005~2010年)、「労使関係・生産性(PROGRESS)」(2010~2013年)、「労使関係・労働政策」(2013~2017年)。