中国の基本情報

面積 959.7万平方キロ(日本の25.4倍)
人口 13億7930万人 (2017年、WFB(The World Fact Book))
首都 北京2,171万人 (2017年、北京市統計)
主要都市 重慶3,017万人、上海2,415万人、天津1,547万人(2016年、世界年鑑)
主要言語 中国語(公用語)。地方方言、諸民族語も多数
民族 漢族91.6%、チワン族1.3%、ほか (政府は56の民族を公認)(2010年、WFB)
宗教 仏教、キリスト教など
GDP 12兆0,146億米ドル(2017年、中国政府統計) ※産業分野別比率は本文第5項参照
一人当りGDP 8,643米ドル(2017年、中国政府統計)
労働力人口 8億670万人(2017年、WFB) ※産業分野別比率は本文第5項参照
産業別分布(%) 第一次産業(名目GDPの9.0%),第二次産業(同40.5%),第三次産業(同50.5%)(2015,国家統計局)
IL0中核8条約要 批准総数26、中核8条約:批准4、未批准4(29、87、98、105)(2018年6月、ILO)
通貨 1人民元=17.07円、1米ドル=6.37人民元(2018年前半平均、IMF)
政治体制 人民民主共和制(一党支配型)
国家元首 習近平国家主席
議会 全国人民代表大会(2,987人)
行政府 国務院・総理(首相)のもと20部  李克強首相(2013年3月就任)
主な産業 製造業、サービス業、など
対日貿易 対日輸出18兆4,593億円 対日輸入14兆8897億円(2017年財務省統計)
日本の投資 1兆4659億円(財務省「国際収支統計」(平成28年))
日系企業数 32,349社 (2017年10月、外務省統計)
在留邦人数 124,162人(2017年10月、外務省統計、香港・マカオ含む)
気候 亜熱帯から寒帯まで多様
日本との時差 -1時間
社会労働情勢概要 ・景気は全体としては従来の減速傾向から持ち直しの方向である。産業や地域によるばらつきがあり、自動車や電子機器は堅調だが、鉄鋼や石炭は過剰生産により厳しい。
・経済発展モデルの転換をめざしており、投資・輸出主導の高成長から消費・内需主導の成長をめざすとし、現状を「新常態(ニューノーマル)」と位置付ける。
・一人当たりGDPは8640米ドルとなり中進国の上位レベルであるが、内陸の農業地帯と沿岸部の工業地帯の格差が大きい。国内の環境汚染が深刻化している。
・労使紛争は個別では年間60万件を超えるレベルが続いており、ストライキ件数は減少傾向にあるが年間200程度である。
主な中央労働団体 中華全国総工会(ACFTU:All China Federation of Trade Unions)
労働行政 中華人民共和国人力資源・社会保障部
中央使用者団体 中国企業連合会・中国企業家協会(CEC/CEDA:China Enteprise Confedration & China Enterprise Directors Association )
最終更新日 2018年 9月 30日
主要統計
(GDP)
201220132014201520162017
GDP成長率 7.77.77.36.96.76.9
一人当りGDP(ドル) 6,0916,9957,5917,5818,1028,643
物価上昇率 (%) 2.62.62.01.42.01.6
失業率 (%) 4.14.14.14.14.03.9

1.政治と社会の経緯(第二次大戦以降、現在まで)

事項
1946年 国共全面内戦
1949年 中華人民共和国成立、国民党政権は台湾に移る(中華民国)。
1950年 「中ソ友好同盟援助条約」調印(1980年解消)、朝鮮戦争参戦
1959年 チベット反乱、ダライラマ亡命
1966年 文化大革命はじまる(〜76)
1972年 ニクソン米大統領訪中。田中日本首相訪中。日中国交正常化
1976年 毛沢東死去。「四人組」逮捕、文化大革命終了
1978年 鄧小平(副主席)が実権。文化大革命否定、「改革・解放」路線へ。日中国交正常化。
1982年 現行憲法制定、胡耀邦・共産党総書記
1989年 天安門事件、江沢民・共産党総書記
1992年 鄧小平、保守派等批判(南巡講和)。日本から天皇陛下訪中
1997年 英国が香港返還 1999年にはマカオ返還
2001年 WTO加盟、上海協力機構設立 2002年・胡錦濤・共産党総書記
2012年 習近平・共産党中央総書記(13年国家主席)。2014年、「一帯一路」経済圏構想打出す。
2014年 中国中心の広域経済圏構想
2015年 人民元が国際化(IMFの国際準備資産(SDR)の通貨に採用)
2017年 共産党大会、習近平主導の体制確立。「社会主義現代化強国」打ち出す。
2018年 憲法改正、国家主席の任期撤廃。米中貿易摩擦が深刻化。「改革・解放」40周年。

2.国家機構

元首

 国家主席。現在は習近平共産党総書記

議会

  • 全国人民代表大会(全人代)が国会に相当。年一回開催され、憲法改正、基本法制の制定、国家主席の選任、首相と閣僚の指名などを行う。
  • 全人代の常設機関として常務委員会がある。

行政

  • 国務院が内閣に相当。首相、副首相、閣僚などで構成され、全人代に対して責任を負い、行政を司る。
  • 行政機構は28の省、委員会よりなる。

司法

  • 裁判制度は、最高人民法院(最高裁)、各級人民法院(高裁、地裁に相当)の二審制。
  • 最高人民検察院(最高検)、地方各級人民検察院(地検)などで構成。

憲 法

1982年憲法 現行憲法。文革色を一掃、近代化路線を盛込む。
1993年憲法修正 「社会主義市場経済」を導入。
1999年憲法修正 マルクス、レーニン、毛沢東に鄧小平理論を加える。
2004年憲法修正 江沢民前国家主席の「三つの代表」思想を追加。
2018年憲法修正 国家主席の任期撤廃、共産党一党支配の正当性明記。

3.政治体制

政体

 人民民主共和制。共産党の一党支配による社会主義国

主な政党

中国共産党 中国で最高の政治権力を持つ。中枢は総書記が主宰する政治局常務委員会(7人)。続いて政治局員(25人)、書記局書記(7人)など。党大会(全国代表者大会)は5年に一回、これに次ぐ中央委員会はほぼ毎年開催。中央軍事委員会はもう一つの頂点で主席は習近平中央総書記。人民解放軍は同委員会の下の共産党直属の軍隊。労使を含むすべての国家組織は共産党の機構と表裏一体である。習近平(総書記・国家主席)、李克強(首相)、栗戦書(国会議長)はいずれも政治局常務委員。

4.人口動態

  • 2017年の人口は13億7930万人 (香港とマカオ、台湾を除く)。人口分布は24歳以下が30%、24歳以上54歳以下が49%、55歳以上が22%である。都市部の人口比率は59.2%で農村部を上回っている(2018年)
  • 1979年からの「一人っ子政策」で高齢化が進行。同政策は2016年1月に撤廃。
  • 国連の将来人口の予測では2030年に14.4億人、2050年に13.6億人である。

5.産業構造と就業構造

主要産業

  • 産業のGDPでの比率は、サービス産業47.5%、製造業等39.5%、農業等8.3%(2017年、WFB)
  • 労働集約・外需主導型産業がけん引する「世界の工場」として第二次産業を中心に発展してきたが、2013年に第三次産業の比率が第二次産業の比率を逆転した。

労働力人口

  • 労働力人口は8億670万人。産業別比率はサービス産業45.3%、鉱工業・建設業28.8%、農林水産業27.7%(2016年、WFB)。就業者数は7億7603万人(2016年、中国政府統計)。

6.経済状況

経済情勢

  • 景気は全体としては2016年前後の減速傾向から持ち直しの方向である。ただし産業や地域によるばらつきがあり、自動車や電子機器は堅調だが、鉄鋼や石炭は過剰生産により厳しい状況にある。金融、サービスを始めとする第三次産業は堅調である。
  • 2018年には米国が貿易での大規模な制裁措置を発動し対抗措置を行った。これによる経済への直接的打撃は大きくはないとみられるが、株価の急落や人民元安の進行などによる投資と消費の減速は避けられないとする見方が強い。
  • 政府は経済発展のモデルの転換をめざしており、従来の投資・輸出主導の高速成長から消費・内需主導による成長を実現するとして、現状を「新常態(ニューノーマル)」と位置付けている。
  • なお2018年の共産党大会では2021年までに「小康社会」(ややゆとりある社会)を実現、2035年までに世界をリードする経済力、学術力を持ち、建国100年の2049年までに「社会主義現代化強国」を築くとする目標が掲げられた。

所得の動向等

  • 一人当りGDPは8,643ドル(2017年)で中進国のレベル。

7.労働組合

ナショナルセンター

  • 中華全国総工会が唯一のナショナルセンターに位置づけられている。
  • 中国の労働組合は、共産党の指導を受けて活動することが基本。「改革開放」以降、市場経済化のなかで新たな役割も担う。
  • 主要な活動として、職場における労働者の権利の擁護、労使関係の調整、雇用の促進、労働者の福祉と保健の増進などがある。
(産業、地方の状況)
  • 10の産業別組織(産業別工会委員会)と、31の地方組織がある。
  • 地方は、省レベルの組織、県・市レベルの組織がある。
  • 企業・事業所レベルの組織(「基層工会」)は184万5千、会員数は全国で約2億9千万人といわれる。

(※)詳細は国際労働財団HPの「ナショナルセンター情報」参照。

8.支援組織、国際産業別労組(GUFs)の活動

現地協力・支援活動実施

  • FES(ドイツ)、ACILS(米国)、LO(ノルウェー)、LO-TCO(スウェーデン)、FNV(オランダ)、CLC(カナダ)が教育・支援活動を展開。

現地事務所設置

  • 上記のうち、FESが北京と上海に現地事務所を設置して活動を続けている。

9.労使紛争の状況

  • 労使紛争のうち個別紛争は2008年の労働契約法の施行による労働者の権利意識の高まりなどにより増加傾向にあり2015年には80万件を超えた。集団紛争は2008年の約70万件から2011年以降は20万件~30万件台のレベルにある。
  • ストライキの堅守は2014年の609件をピークに減少傾向にある。なお、中国ではストライキは合法ではない。

ストライキ件数の推移

2011 2012 2013 2014 2015 2016
全企業 72 203 443 609 346 192

外資系企業

(日系企業)
25
(21)
41
(20)
52
(6)
72
(7)
24
(5)
28
(7)

資料:中国労工通訊データ/日系企業はJILPTによる

  • 政府は集団労使紛争の予防に向け、賃金に関する労使間の協議のルールを定めた「賃金集団協議制度」の普及を進めている。2000年に定められたもので、従業員代表と、企業代表が、企業内部の賃金分配制度、賃金分配方法、賃金所得水準などについて協議を行い、賃金集団契約を締結する枠組みである。企業に工会との団体交渉への対応を義務付ける一方、団体交渉に至る手続違反や労働者による暴力行為などへの罰則も明文化された。

10.最低賃金制度と労働・社会保障法制

最低賃金

  • 2018年の最低賃金は北京、天津などの直轄市では5%~6%程度引き上げられた。地方ではそれを上回るものが見られる。
  • 中国の最低賃金制度は国の「最低賃金規則」(2004年施行)に基づき、31の省、自治区および直轄市(北京、天津、上海、重慶)の地域単位で決定される。同規則では最低賃金基準を少なくとも2年に1度改めることが規定されている。
  • 世界経済危機からの回復をめざす第12次五か年計画(2011-2015年)では、最低賃金を、「年平均13%以上引き上げること」が明記されていたが、第13次五カ年計画(2016-2020年)ではこれは削除された。
2018年の最低賃金
地域 省市名 賃金額
(中国元)
実施年月 上昇率(%)
東部 北京市 2,120 2018年9月 6.0
天津市 2,050 2018年7月 5.1
上海市 2,420 2018年4月 5.2
江蘇省蘇州市 2,020 2018年8月 4.1
広東省深圳市 2,200 2018年7月 3.3
中部 江西省南昌市 1,680 2018年2月 9.8
東北部 遼寧省 1,620 2018年1月 5.9
西部 四川省成都市 1,780 2018年7月 18.7
雲南省 1,670 2018年5月 6.4
チベット自治区 1,650 2018年1月 17.9
労働・社会保障法制
  • 主な法制は次の通り。
    「工会法」(2001年改正)、「労働争議調停法」(2008年)。「労働法」(1995年)、「労働契約法」(2008年)、「障碍者雇用法」(1991年)、「高齢者権益法」(1996年)、「労働安全法」(2002年)、「労働災害法」(2003年)、「最低賃金規定」(2004年)、「社会保険法」(2010年)

(※)国際労働財団のアジア労働法データベース参照。

11.日本のODA方針

  • 中国の開発に資する支援が一定の役割を果たしたことを踏まえ、同国に対するODAは、我が国国民の生活に直接影響する越境公害、感染症、食品の安全等協力の必要性が認められる分野における技術協力や草の根・人間の安全保障武将資金協力などの限られた分野での協力を実施する。また、その大部分を占める技術協力については、日中双方が 適切に費用を負担する方法を段階的に実施。
  • なお、2018年10月の日中首脳会談で日本から中国に対する新規のODAを終了することが確認される予定である。これに伴い継続中の事業も2021年度末にはすべて終了の見込み。

11.JILLAFの事業

  • 招へい事業は1997年から開始。これまでに212人(男性123人、女性89人)を招へい(2017年度末現在)。
  • 現地支援事業は1997年から実施。テーマは「労使関係と団体交渉」(1997~1999年)、「市場経済下の労働運動の労使関係」(2000年)、「労使関係」(2001~2003年)、「中小企業組織化」(2001、2002年)、「職場環境改善」(2002~2006年)、「労使関係と生産性」(2010年)。2016、2017年には労使関係・労働政策セミナーを北京と南京で開催。