ベトナムの基本情報

面積 33.1万平方キロ(日本の0.87倍)(2017年、The World Fact Book(WFB))
人口 9,370万人 (2017年、ベトナム政府統計)
首都 ハノイ(732.8万人、2016年、ベトナム政府統計)
主要都市 ホーチミン829.7万人、ハイフォン198万人、カントー126万人、ダナン105万人、 ニャチャン60万人(2016年)
主要言語 ベトナム語
民族 ベトナム人86%、ムオン族など53少数民族
宗教 仏教、キリスト教(カトリック)など
GDP 2204.1億米ドル(2017年、ベトナム政府統計)※産業分野別比率は本文第5項参照
一人当りGDP 2,354米ドル(2017年、ベトナム政府統計)
労働力人口 5,473万人(2017年) ※産業分野別比率は本文第5項参照
産業別分布(%) サービス業40.7%(卸・小売10.5%、不動産6.2%)、鉱工業・建設業35.0%(製造17.4%、建設業5.0%)(2015年、(公財)国際金融情報センター各国情報より)
IL0中核8条約要 批准総数21、中核8条約:批准5、未批准3(87号、98号、105号)(2018年、ILO)
通貨 100ドン=0.484円、1米ドル=22,434ドン(2018年第一四半期平均、IMF)
政治体制 社会主義共和制(共産党一党支配)
国家元首 ダン・ティ・ゴック・ティン臨時国家主席(2018年9月就任)
議会 一院制(500人)
行政府 首相のもと、18省、ほか  グエン・スアン・フック首相(2016年4月就任)
主な産業 農林水産業、鉱業、軽工業
対日貿易 対日輸出2兆7914億円 対日輸入1兆6,881億円(2017年、財務省統計)
日本の投資 2,238億円(2017年、財務省統計)
日系企業数 1,753社(2017年、ジェトロ在ベトナム日本商工会・会員数合計)
在留邦人数 17,266人(2017年、外務省統計)
気候 南部:熱帯、北部:温帯、雨季:5~9月
日本との時差 -2時間
社会労働情勢概要 ・政治は共産党の一党支配による社会主義体制であるが、2011年の大会では2020年までに近代工業国を築くとの目標を採択している
・経済は成長が続くが、未成熟な投資環境、国営企業や行政の非効率性、国内地場産業の未発達等の懸念材料がる。若い労働力が豊富であり製造業をはじめ日本企業の展開が続き、中小企業の進出も増加している。
・市場経済が進展するなか、地域間、都市と農村の所得格差・教育格差の拡大、公共のサービスを享受できない人の拡大、都市に移動する農民の大幅な増大等の課題がある。
・労働問題は主要な社会課題となっており、政府は労働争議の動向を注視している。
・労働組合はベトナム労働総同盟(VGCL)が共産党の指導のもとにある唯一のナショナルセンターであり、各省などの地域組織、20の産業別組織を持つ。
主な中央労働団体 ベトナム労働総同盟(VGCL:Vietnam General Confederation of Labour)
労働行政 労働・傷病兵・社会問題省(Ministry of Labour, Invalids and Social Affairs)
中央使用者団体 ベトナム商工会議所(VCCI:Vietnam Chamber of Commerce and Industry)
最終更新日 2018年 9月 30日
主要統計
(GDP)
201220132014201520162017
GDP成長率 5.05.46.06.76.26.8
一人当りGDP(ドル) 1,7531,9002,0492,0882,1722,354
物価上昇率 (%) 6.86.01.80.62.72.6
失業率 (%) 3.23.63.43.43.23.2

1.政治と社会の動向(1945年以降)

事項
1945年 日本敗戦、北部で「ベトナム民主共和国」独立宣言、再支配めざすフランスとの戦争
1954年 仏軍が北部ディエンビエンフーで敗退。ジュネーブ休戦協定で南北分離。
1955年 南部に「ベトナム共和国」(南ベトナム)成立
1960年 南ベトナム解放戦線結成。1962年、米国が南部に軍司令部設置(ベトナム戦争)
1964年 トンキン湾事件(米国艦隊への襲撃)、米国・北部爆撃開始(戦争本格化)
1973年 パリ和平協定で米軍撤退。1975年解放戦線の攻勢で南ベトナム崩壊
1976年 南北統一、国名を「ベトナム社会主義共和国」に統一
1978年 ベトナム軍、カンボジア侵攻。1979年中越武力紛争
1986年 共産党大会でドイモイ(刷新)政策採択
1991年 カンボジア和平パリ協定。1992年、日本の援助再開。
1995年 米国と国交正常化、ASEAN加盟
2000年~ 2009年まで、平均10%の経済成長
2007年 WTO加盟。2008年、日本との間で初めての経済連携協定(EPA)を締結。
2011年 共産党大会、グエン・フー・チョン書記長選出。「新10年計画」。
2014年 EPAを踏まえ、看護師・介護福祉士が日本での就労開始。
2016年 共産党大会、ドイモイの推進、腐敗の追放を決議。

2.国家機構

元首

 国家主席(大統領)。国会議員のなかから国会で選出される(政治の実権は共産党書記長)。現在はダン・ティ・ゴック・ティン氏が臨時の国家主席(2018年9月のクアン前主席死去による)

議会

  • 一院制、500議席。中選挙区による直接選挙制、任期5年。

行政

  • 首相:現在はグエン・スアン・フック氏(2016年就任)。国会で選出。
  • 閣僚:首相が指名し、国会が承認。
  • 行政:首相のもとに18省。労働行政は「労働・傷病兵・社会問題省」が担当。

地方行政

  • 全国58省、5政府直轄市(ハノイ、ホーチミン、ハイフォン、ダナン、カントー)

司法

  • 最高裁判所、地方人民裁判所の二審制。ほか、軍事裁判所。

3.政治体制

政体

  • 社会主義共和国。共産党一党支配による社会体制

主な政党

ベトナム

共産党
5年に一度招集される党大会が最高機関。党大会は大会閉会中の最高指導機関として中央委員会を、中央委員会は、最高意思決定機関として政治局を、また党の日常業務の処理機構として書記局を選出する。2016年1月の党大会では指導部として、最高実権者のグエン・フー・チョン書記長以下、18名の政治局員を選出。グエン・ティ・キム・ガン(国会議長)、グエン・スアン・フック(首相)

4.人口動態

  • 国連人口基金の予測によると、ベトナムの人口は2017年には9500万人強だが、2040年には1億400万人に増加する見通し。2017年の年齢構成は15歳未満が23.6%、15歳以上65歳未満が70.3%、65歳以上が6.1%と若く、しばらくは「人口ボーナス」(人口に占める労働力の割合が増加する)が続くと考えられている。
  • 一方、政府は人口抑制と貧困解消のためゆるやかな出生抑制政策をとっており、また合計特殊出生率も2008年の2.1から2013年には1.7に減少している。今後、ピラミッド型の人口構造は崩れ、若年者の割合が低下し、高齢化が進むと見込まれている。 
  • 今後は人口に占める65歳以上の割合は、2020年には8.2%、2040年には17.1%を超え、高齢化が進行すると推計されている。

5.産業構造と就業構造

主要産業

  • 主要産業は、農林水産業、鉱業、軽工業など。GDPの産業分野別比率はサービス業等41.3%、製造業等33.3%、農業等15.3%(2017年、WFB)
  • 主な輸出品は、縫製品、携帯電話・同部品、原油、PC・電子機器・同部品、履物など。
主な輸入品は、機械機器・同部品、PC・電子機器・同部品など。

労働力人口

  • 労働力人口は近年一貫して増加しており、2017年には5,473万人。産業別では農業等40.3%、製造業等25.7%、サービス業等34%である(WFB)。同年の就業者数は5,370万人。

6.経済状況

経済情勢

  • ドイモイ(刷新)の考え方を継続、市場経済化と国際経済への統合を推し進める中、WTOの加盟各国として、各国・地域とのFTA/EPA締結を進めており、TPP11にも参加している。一方では、未成熟な投資環境、国営企業の非効率性、国内地場産業の未発達などの懸念材料がある。この間の、GDP 成長率は2015年6.7%、2016年6.2%、2017年6.8%であり、消費者物価の上昇率は2015年が0.6%、その後も3%未満であり、経済は安定的な成長を続けている。

所得の動向等

  • 経済成長に伴い、一人当りGDPも増大し、2015年に2,000米ドルを超え、2017年には2,354米ドルであるが、低開発国のレベルから脱するには至っていない。
  • 最低賃金が必要最低生活費(所謂生活賃金)に達していない。現在の最低賃金は、必要最低生活費の三分の二程度である。

7.労働組合の組織

ナショナルセンター

  • ベトナムでは「ベトナム労働総同盟」(VGCL)が唯一のナショナルセンターと位置づけられている。VGCLには工業・商業、保健、教育、建設、繊維、郵便・電信といった20 の全国産業別組織を擁しており、890万人(女性:48.5%)の労働者が加盟している(2016年1月)。 (※)詳細は国際労働財団HPの「ナショナルセンター情報」参照。
  • ベトナムでは労働組合はVGCLを中央組織の下でのみ設立可能とされている。この組織系統における上部組織は、下部組織の連合体というよりも、下部組織の指導・監督機関としての性格が強い。なお、TPPの交渉過程では複数組合が容認される方向であったが、米国の離脱もあり実現していない。
  • 労働組合の系統の末端にあるのが、企業等の各事業所単位で設立される基礎労働組合である。2013年の労働法改正により、事業主と労働者間で情報を共有し、相互理解を深め、職場の良好な労使関係づくりを目的として、職場における労使間の対話が規定された。3か月に1回以上の定期対話と、1年に1回の労働者全員との職場集会が義務付けられている。

8.支援組織、国際産業別労組(GUFs)の活動

現地協力・支援活動実施

  • 現地協力・支援活動を行っている組織は、日本JILAF、ドイツFES、米ACILS、豪APHEDA、フィンランドSASK、ノルウェーLO、スウェーデンLO-TCOである。
  • GUFsも加盟組織などを通じて支援活動を行っている。

現地事務所設置

  • 協力・支援活動実施組織のうち、現地事務所を設置しているものは、ドイツFES、豪APHEDAである。

支援組織連絡調整会議

  • 第6回会議は2016年5月にハイフォンで開催。

9.労使紛争の状況

  • ベトナムは社会主義国のなかでは例外的に労働法にストライキが規定されている。しかし、その手続きが煩雑なため、合法的なストライキはほとんどないといわれる。
  • ストライキの八割程度は外資系企業で行われている。台湾、韓国などの企業が多いが日系企業での発生もみられる。事業主は、労働者が正当な理由無しに月に合計5日、又は1 年に合計20 日、無断欠勤した場合、解雇できることから、違法なストライキは4日以内に収束する傾向がある。2011年は物価高による生活苦などからストライキが大幅に増加したが、政府はVGCLに対し、ストライキを半減するよう指示した。
  • VGCLは、2015年には2011年に比べストライキが大幅に減少したことを報告した。この年の11カ月間の発生は262回、約61%は外資系企業で起こり、39%が国内民間企業である。外資系企業のうち台湾と韓国の企業でのストライキが多く、日本企業は5%程度であった。

労働争議件数の推移

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
労働争議件数( 342 507 993 601 384 293 262※

ベトナム政府統計 (※は1~11月)

10.最低賃金制度と労働・社会保障法制

最低賃金

  • 最低賃金は、政府が「全国賃金審議会」においてベトナム労働総同盟(VGCL)ならびに使用者と協議を行い、決定する。2018年の最低賃金の引き上げ率は、6.5%程度となり、1997年以降の上昇率で一番低い結果となった。最低賃金は地域別に4つに分けられ、地域1(ハノイ市、ホーチミン市、ハイフォン市など)、地域2(ダナン市、バクニン省など)、地域3(地方都市)、地域4(その他の地方)ごとに定められている。なお、2018年の最高額のエリア1の最低賃金額は米ドル換算では約175ドルである。
最低賃金の推移 

(賃金額はドン、引上率は%)

地 域 2015 2016 引上率 2017 引上率 2018 引上率
エリア1 3,100,000 3,500,000 12.9 3,750,000 7.1 3,980,000 6.1
エリア2 2,750,000 3,100,000 12.8 3,320,000 7.1 3,530,000 6.3
エリア3 2,400,000 2,700,000 12.5 2,900,000 7.4 3,090,000 6.6
エリア4 2,150,000 2,400,000 11.6 2,580,000 7.5 2,760,000 7.0
労働・社会保障法制
  • 主な法制はつぎの通りである。 
    ・「労働組合法」(1990年、2012年改正)(※)。「労働法典」(1994年、2012年改正) (※)、「労働安全衛生法」(2015年制定)、「職業訓練法」(2006年制定)。「社会保険法」(2007年)、「健康保険法」(2009年)
    (※)印の法律については国際労働財団のアジア労働法データベースに日本語訳がある。

外国人労働者(日本人を含む)

  • ベトナムの国内企業は、マネージャー、監督業務、専門家、技術者として働く場合で、ベトナム人労働者では要求を満たせない場合にのみ外国人労働者を雇うことができる。外資系企業は、外国人労働者を採用する前に、外国人を雇用する必要性を国家機関に提出し、書面により承認を得なければならない。(外国人雇用に関する通達・2011年など)

11..日本のODA方針 (外務省・「国別開発協力方針(2017年12月)」より)

  • 基本方針:ベトナムの社会経済開発戦略・計画を踏まえ、国際競争力の強化を通じた持続的成長、脆弱な側面の克服及び公正な社会・国づくりを包括的に支援。
  • 重点分野:①産業競争力の強化および産業人材育成、交通網整備とエネルギー安定供給への支援、②環境、災害等への対応への支援、ならびに保健医療、社会保障・社会的弱者支援等の分野で体制整備等の支援、③ガバナンス強化のための行政組織等の人材育成。

12.JILAFの事業

  • 招へい事業:1999年から今日まで、68人の若手労組指導者(男性38人、女性30人)を招へい(2017年度末現在)
  • 現地支援事業:2001年から現地セミナーなどを実施。テーマは、「労使関係」(2001~2003年)、「生産性と賃金」(2004、2005年)、「団体交渉と労働協約」(2005年)、「組織化」(2006~2012年)、「労働安全衛生(POSITIVE)」(2004、2005、2008、2009年)、「参加型職場環境改善」(2006,2007年)、「労使関係・生産性(PROGRESS)」(2010~2013年)、「グローバル化と労働運動」(2013年)、「労使関係・労働政策」(2013~2017年)。
  • インフォーマル支援事業(SGRA):2017年より実施。セミナー、職業訓練など。