フィリピンの基本情報

面積 30万平方キロ(日本の0.79倍)(2017年、The World Fact Book(WFB))
人口 1億492万人(2017年、国連推計)
首都 マニラ(マニラ首都圏1,287.7万)(2015年、フィリピン政府統計)
主要都市 ダバオ163.2万人、セブ92.2万人、サンボアンガ86.1万人(2015年)(世界年鑑)
主要言語 フィリピノ語、英語(ともに公用語)、他に8つの主要方言 
民族 マレー系が中心、中国系、少数民族等
宗教 キリスト教93%(カトリック81%)、イスラム教5%、ほか (2000年、WFB)
GDP 3,134億米ドル(2017年、フィリピン政府統計)※産業分野別比率は本文第5項参照
一人当りGDP 2,988米ドル(2017年、フィリピン政府統計)
労働力人口 4,139万人(2017年、ILOデータベース) ※産業分野別比率は本文第5項参照
産業別分布(%) サービス業59.0%、製造業20.1%、農林水産業10.3%、建設業6.7%(2015年、(公財)国際金融情報センター各国情報より)
IL0中核8条約要 批准総数:38、中核8条約批准:8(すべて批准) (2018年6月、ILO)
通貨 1フィリピン・ペソ(PHP)=2.09円 1米ドル=52.0PHP(2018年前半平均、IMF)
政治体制 共和制
国家元首 ロドリゴ・ロア・ドゥテルテ大統領
議会 二院制:上院24議席、下院297議席
行政府 大統領のもと、大統領府、19の省。首相なし。
主な産業 農林水産業、サービス業
対日貿易 対日輸出1兆961億円、対日輸入1兆2,480億円(2017年財務省統計)
日本の投資 1,119億円(2017年、財務統計)
日系企業数 1,502社(2017年、外務省統計)
在留邦人数 16,570人(2017年、外務省統計)
気候 熱帯気候、雨季5~11月
日本との時差 -1時間
社会労働情勢概要 ・ドゥテルテ大統領が麻薬対策や治安の改善に取り組むが、ミンダナオではIS系のイスラム過激派のテロがみられる。
・経済は好調を維持し、ASEAN中でも高い成長率を継続。1000万人を超える在外労働者からの送金も経済を支えており、国内産業の体質改善と競争力強化が課題である。
・生産年齢人口が多く、労働者の半数以上が第三次産業に従事する。国民の経済格差や非正規労働、インフォーマル経済の増大等が課題。
・最低賃金は各地の三者委員会で決定されるが、この間、地域別、産業別ともに引き上げが続いている。
・労働組合はフィリピン労働組合会議(TUCP)が主軸。組織拡大や政策課題などに取り組むが、分裂状態にあり、今後の対応が課題。
主な中央労働団体 フィリピン労働組合会議(TUCP:Trade Union Gongress of Philippines)
自由労働者連盟(FFW:Federation of Free Workers)
労働行政 フィリピン労働雇用省(DOLE: Department of Labor and Employment)
中央使用者団体 フィリピン経営者連盟(ECOP:Employers Confederation of Philippines)
最終更新日 2018年 9月 30日
主要統計
(GDP)
201220132014201520162017
GDP成長率 6.86.96.16.16.96.7
一人当りGDP(ドル) 2,6122,7692,8512,8822,9552,988
物価上昇率 (%) 3.23.04.11.41.83.2
失業率 (%) 7.07.16.66.35.45.7

1.政治と社会の動向(1945年以降)

事項
1945年 日本軍降伏、米国領に復帰
1946年 米国から独立、フィリピン共和国。ロハス大統領就任
1965年 マルコス大統領就任、ベトナム戦争支援強める。
1969年 新人民軍(共産党の軍事組織)発足。1970年モロ民族解放戦線(MNLF)創設。
1972年 マルコス大統領、戒厳令布告。1973年、暫定議会選挙、マルコス系圧勝。
1981年 「戒厳令」解除。大統領選挙、マルコス氏三選
1983年 アキノ元上院議員、マニラ空港で暗殺。民主化運動が急展開。
1986年 総選挙をきっかけに「ピープルズパワー」、マルコス米国亡命。
1986年 コラソン・アキノ大統領就任。1989年には軍部隊の反乱を鎮圧。
1989年 ミンダナオで住民投票。4州でムスリム・ミンダナオ自治区(ARMM)発足。
1992年 F.ラモス大統領就任。経済自由化促進。民族解放戦線(MNLF)と和平、共産党一部合法化。
1998年 エストラダ大統領就任も疑惑で退陣、2001年アロヨ副大統領昇格(9年5か月の長期政権)
2010年 ベニグノ・アキノ3世(コラソン・アキノ元大統領の長男)、大統領就任
2012年 成長率が6%を超え今日まで7年間継続、ASEAN屈指の経済成長。
2014年 MNLFから分かれたモロ・イスラム解放戦線(MILF)との包括的和平合意。
2016年 ロドリゴ・ロア・ドゥテルテが大統領に就任。麻薬取締など強化。
2017年 共産系の新人民軍との停戦合意破棄。ミンダナオでIS系の過激派との戦闘。

2.国家統治機構

元首

 大統領。現在はロドリゴ・ロア・ドゥテルテ。正副大統領ともそれぞれ別に直接選挙で選出。任期6年、大統領の再選および副大統領の連続3選は禁止。

議会

  • 上院、下院の二院制。 
    上院(元老院):24議席。全国1選挙区で任期6年、3年毎に半数改選。3選禁止。
    下院(代議院):297議席。選挙区選挙で任期3年。4選禁止。
  • 2016年総選挙による主要政党の獲得議席
    自由党(LP)115、民主主義者国民連合(NPC)42、国民統一党(NUP)23、
    国民党(NP)17、統一国民連合(UNA)11、ラカス(CMD)4

行政

  • 内閣は議会の承認を得て大統領が任命。大統領、副大統領、19の省庁の大臣・長官で構成。

司法

  • 最高裁、控訴裁、地裁の三審制。ほかに公務員犯罪特別裁判所。

3.政治体制

政体

  • 共和国。普通選挙にもとづく民主主義。大統領が政治の最高権力を持つ。

主な政党

PDPラバン ドゥテルテ大統領の与党。1986年に旧フィリピン民主党(PDP)と国民の力(Lakas ng Bayan)が合同して結成(PDPは1983年にベニグノ・アキノ氏が創設)。従来は少数政党だが、大統領戦後、他党からの移籍が増え最大与党に。地方議会でも他党からの合流。
自由党
(LP)
1946年結成の自由主義(リベラル)政党で、従来は二大政党の一翼を担う。ベニグノ・アキノ前大統領時代には最大与党。現在は所属議員がPDPラバン等に流れる。創設者の孫、M.ロハス上院議員が現党首で、2016年大統領選挙に出馬、ドゥテルテ氏に敗北。
国民党
(NP)
1907年結成、独立運動を主導した保守政党。戦後史では二大政党の一翼で、マルコス元大統領が所属。1978年にマルコスが新支持政党として「新社会運動」を結成したことにより解体したが、その後再建された。
ラカスCMD アロヨ前大統領時代の与党。2009年、ラモス元大統領系の「ラカス(力)」とアロヨ大統領系の「カンピ(自由フィリピンの仲間)」が統合して結成。
民族主義者国民連合
(NPC)
1992年の大統領選の際、候補であったエドワルド・コファンコ氏支持者の政党。
国民統一党
(NUP)
2011年にラカスCMDを離れた議員・支持者により結成された政党。

4.人口動態

  • 国連人口基金(UNFPA)の推計によれば、フィリピン人口は、2013年に1億人を超えた。現況から見ると、その後、2050年に約1億5,100万人、2100年には約1億7,300万人に達すると予測されている。 
  • 国民年齢の中央値は23.5歳であり、若年人口比率が高い。国民の年齢別構成は、25歳未満が52.6%、25歳~64歳は43.03%、65歳以上が4.5%である。

5.産業構造と就業構造

主要産業

  • 農林水産業とサービス業が主要な産業である。GDPの産業分野別比率はサービス業等59.8%、製造業等30.6%、農業等9.6%(2017年、WFB)

労働力人口

  • 2017年の労働力人口は4,139万人。分野別比率はサービス業等56.3%、農業等25.4%、製造業等18.3%(WFB)。サービス産業では、近年、コールセンター事業等のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業なども成長している。

  • 政府は、5か月などの短期契約の反復更新が脱法的に利用されていることから(6か月雇用すると正社員化する規定がある)、その改善を指導している。

6.経済状況

経済情勢

  • 経済は好調を維持し、ASEAN加盟国の中でも高い成長率が続いている。 2017年のGDP成長率は6.7%であり、産業別には製造業が8.6%増、農林水産業が3.9%増。貿易では輸出が伸びているが、国内の好況などから輸入も増大し貿易赤字は拡大。
  • 経常収支は25億ドルの赤字にとどまり、ほぼ均衡がとれているが、これを支えているのは、アジアや中東などで働く1000万人を超える在外フィリピン人からの送金である。2016年にはGDPの一割に近い269億ドルが送金されている。国内産業の改善をすすめバランスのとれた経済構造を実現することが課題である。
  • ドゥテルテ大統領は2017年2月、「フィリピン開発計画2017-2022年」を策定し、経済基盤となるインフラの整備を重視し、高信頼社会と国際競争力ある知識経済を志向することを表明、具体的施策を展開しつつある。

所得の動向等

  • 一人当りGDPは2,988ドル(2017年)。

7.労働組合の組織

ナショナルセンター

  • 代表的な労働団体は、フィリピン労働組合会議(TUCP)である。このほか、FFW、SENTROなどのITUC加盟組織、その他がある。2013年、TUCPは分裂し二つの組織が活動している。組織率は8.7%(2014年・労働雇用省)。
  • 活動の主要課題は、①生産性と労使関係、 ②グリーンジョブとディーセントワーク、 ③経済特区とコールセンターの組織化、④組合経済プロジェクトなど。
    (※)国際労働財団「ナショナルセンター情報」参照。

産業別の状況

  • TUCP加盟産別の主な業種は、製造業、電子、繊維、化学、銀行である。

8.支援組織、国際産業別労組(GUFs)の活動

現地協力・支援活動実施

  • 労働者教育・支援プログラムを実施している組織は次の通り。JILAF(日本)、FES(ドイツ)、LO(デンマーク)、SASK(フィンランド)、ACILS(米)、APHEADA(豪)、LO-TCO(スウェーデン)、WSM(ベルギー)。GUFsによる活発な支援。

現地事務所設置

  • 上記のうち、FES(ドイツ)、LO(デンマーク)が現地事務所を設置し事業を展開。

9.労使紛争の状況

  • 労使紛争の主な原因としては、最低賃金が遵守されないことも含む賃金の不払い、労使が合意した労働協約(CBA)違反によるトラブルの他、セクシャルハラスメント及び職場内の暴力行為等が挙げられる労使紛争の結果ストライキ等の争議行為に発展することはほとんどない。 
     労使紛争からストライキ等に発展しない理由として、 憲法を根幹とした政労使が社会対話を行うことでトラブルを解決する土壌や、国が労使紛争の解決に積極的に介入することができる制度が背景にある。未組織の企業では、通常は苦情処理委員会が労働者の苦情解決にあたる。苦情処理委員会で解決されない労働事件は、労働裁判所や全国労使関係委員会(NLRC)で争われることとなるが、その前にシングルエントリー・アプローチ(SEnA)で仲裁・調停を経なければならない。

10.最低賃金制度と労働・社会保障法制

最低賃金

  • 「賃金合理化法」にもとづき、「三者委員会」が地域と 産業の最低賃金を決定。地域別の状況は以下の表の通り。
  • なお、2012年の法改正で、「生産性賃金制度」が取り入れられた。「生産性賃金」とは、①労働者の生産性、業務内容、生活コスト、企業の業績・財務状況を勘案して調整、 ②別途のガイドラインで調整、 ③導入は企業の任意、とされている。
地域別最低賃金額(2018年9月現在)

(単位:ペソ、%)

地方コード 対象地域 改訂後 改定月 改定前 上昇率
NCR マニラ首都圏 512 2017.10 491 4.3
CAR コルディエラ自治区 320 2018.8 300 6.7
R1 イロコス 310 2018.1 280 10.7
R2 カカヤンバレー 340 2017.9 300 13.3
R3 中部ルソン 400 2018.8 380 5.3
R4 カラバルソン 400 2018.4 378.5 5.7
ミマロパ 300 2017.9 280 7.1
R5 ビコール 305.0 2018.8 290.0 5.2
R6 西部ビサヤ 365.0 2018.6 323.5 12.8
R7 中部ビサヤ 386.0 2018.8 366.0 5.5
R8 東部ビサヤ 305.0 2018.6    
R9 サンボアンガ半島 316.0 2018.6 296.0 6.8
R10 北部ミンダナオ 338.0 2017.6 318 6.2
R11 バタオ 370.0 2018.8 340.0 8.8
R12 ソクサージェン 311.0 2018.4 295.0 5.4
CARAGA カラガ 305.0 2017.12 290.0 5.2
ARMM イスラム自治区 280.0 2018.6 265.0 5.7

※職種等で賃金額が異なるため、各地域の最高額のみを表示。

資料:出所:全国賃金生産性委員会

労働・社会保障法制
  • 主な労働・社会保障法制は次の通りである。 
    「労働法典」(1974年)(※)、「賃金合理化法」、「最低賃金法」(2013年)など。
    →(※)の法律は国際労働財団HP「アジア労働法データベース」に日本語訳がある。

11.日本のODA方針 (外務省「国別開発協力方針(2016年4月)」より)

  • 基本方針:フィリピン政府の「開発計画2017-22年」が目標とする「包摂的な成長、競争力のある知識経済等」の実現に向け、「日比共同声明(2017年)」の実施を含めた経済協力を実施。
  • 重点分野:①雇用の創出・人材育成を含む産業振興など持続的経済成長のための基盤強化、②貧困層への影響の大きい各種リスクへの脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定、環境問題に対応する社会インフラ整備など、包摂的な成長のための人間の安全保障の確保等、③ミンダナオにおける平和と開発

12.JILAFの事業

  • 招へい事業:1991年度からはじめ、今日までに83人(男性48人、女性35人)の若手労働組合指導者を招へい(2017年度末現在)。
  • 現地支援事業はセミナーを1994年から実施。テーマは「労組基礎教育」、「労使関係」、「労使協議制度」、「金融危機への対応」(2009年)、「参加型職場環境改善(POSITIVE)」(2004~2009年)、「労使関係と生産性(PROGRESS)」(2009~2013年)、「グローバル化と労働組合の役割」(2013年)、「労使関係・労働政策」(2013~2017年)。